投資家が注目する「社員クチコミと働き方の関係」 従業員エンゲージメントなど非財務指標に脚光
また、ESG項目の社会(Social)には、従業員も含まれており、労働環境やダイバーシティも重視される。2020年に米国証券取引所(SEC)が上場企業に対して人的資本の情報開示を義務化したことも大きな変化だろう。
こういった社会の流れからも、これまで以上に経営者は人的資本のマネジメントに注意深く取り組み、ときには開示する必要がでているのである。
従業員の満足度は投資評価の対象になっている
いくつか事例を紹介したいと思う。経済情報プラットフォームのSPEEDAなどの事業展開をしているユーザベースは、決算説明会資料の中で、OpenWorkのクチコミランキングについて掲載している。ユーザベース社が力を入れている「多様な才能が最大限に発揮される環境づくりへの活動」の評価の一指標として開示している。
また、私の古巣で、弊社の親会社でもあるリンクアンドモチベーションは、全グループ企業のエンゲージメントレーティングを統合報告書に開示している。ここでいうエンゲージメントとは、従業員の満足度や働きがいを指す言葉だ。それを指数やレーティングなどによって見える化し、さらに、数値向上を経営目標に掲げる企業が増えてきている。
リンクアンドモチベーションの坂下社長は、「事業成長における従業員エンゲージメントは人的資本開示の流れからも欠かせない経営テーマであり、資本市場に対して情報開示すべきと考えている」と話す。
ほかにも東急や味の素などが、統合報告書にこうした従業員エンゲージメントレーティングやスコアを開示し、目標を定めている。
このように人材活用の部分における非財務情報の開示を、自主的に取り組み始めている企業が出始めている。徐々にこういった対応をしていない企業は、労働市場だけでなく、資本市場からも選ばれなくなっていくリスクがあるのである。
今回は社員クチコミのような非財務指標が、投資家から注目されている理由や最新研究、またその実例について紹介した。企業経営において、財務指標だけでなく非財務の指標も意識した経営がますます求められるだろう。
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