多数意見に「のまれる人」「打ち勝つ人」決定的な差 「ネオヒューマン」はビジネスパーソン賛歌だ
日本人のリーダーには、IQやEQが高い方が多く、それは世界に誇れるレベルだと思います。しかし、それらに多少難はあっても、VQが群を抜いて高い、というタイプのリーダーは決して多くはありません。それをどう育むか、は大きな課題だと考えます。
ビジネスには「世界を変える」力がある
ピーターさんは、ロボット工学の博士ですが、経営コンサルタントという「ビジネスパーソン」でもあります。それで生計を立てているプロとしては、ビジネスパーソンの顔のほうが大きいのではないでしょうか。
世界には、ピーターさんのことを科学者としてより、ベストセラーとなったビジネス本の著者、科学の知見が深い経営コンサルタントとして認知している人が多いでしょう。
ピーターさんが偉業を成し遂げる過程を見ていると、シンプルに「とても仕事ができる」人だと感じます。リサーチ力、プレゼンスキル、交渉力、プロジェクトマネジメントスキル、そしてチームビルディングの巧みさ。こういった、一流のビジネスリーダーが持つ技能を、ピーターさんはいかんなく発揮します。
まさに「ビジネスパーソン、ここに極まれり」です。そして、ビジネスは、資本主義社会のエンジンです。それをベースにして、現代の社会システムが成立しています。だから、高度に資本主義が発達した現代において、本当の意味で社会を変えることができるのは学者でも、政治家でも、芸術家でもなく、ビジネスパーソンなのです。
経済活動は卑しいものである、ビジネスより学術のほうが尊い、という風潮は、その起源を古代にまで遡れる根深いものです。古代ギリシャでは、市民は学問や芸術にいそしみ、市民ではない人たちが経済活動を支えていました。
伝統を重んじるヨーロッパに対して、革新を重んじるアメリカではそういった感覚があまりありません。むしろ、アメリカでは起業家がヒーローです。経営コンサルタントに転じたピーターさんがアメリカ行きを夢見て、アメリカで世界的な成功をあげたのは、自分の中にある学術とビジネスの葛藤に折り合いをつけるためだった。そう考えるのはあまりにビジネスパーソン寄りの視点でしょうか。
私はビジネスパーソンなので、我田引水であると自覚しつつ、こう思います。ピーターさんは何よりビジネスパーソンである、と。そして、ビジネスパーソンであるからこそ、歴史を変えられたのだ、と。
腕っぷしの強い戦士が、教養と高貴な義務感を身につけた貴族が、機知と知略に富んだ政治家が、理想を掲げ大胆に行動する芸術家が、進取の気性を持つ科学者が世界を変えてきた時代もありました。
しかし、これからの時代は、高いVQを持ったビジネスパーソンこそが歴史を作り、世界を変えることで、新しい文明をつくっていく。『ネオ・ヒューマン』はそう感じさせてくれる本でした。
そういう意味で、本書は、「ビジネスで世界を変えたい」と考える1人ひとりへの賛歌でもあります。時代を変えるためのビジネス書であり、歴史書であり、人間書である。
会社の文化、暗黙のルールにがんじがらめになっているビジネスパーソン、そして、社会を変えようという意志を抱いている起業家の皆さんに、ぜひ読んでいただきたいですね。
(構成:泉美木蘭)
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