利益倍増、ファナック好調はいつまで続くか 課題はiPhone"特需"が一巡した後

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部門別で最も売上規模が大きく、かつ利益率も高い主力のFA(ファクトリー・オートメーション)部門は過去最高とまではいかなかった。同部門はファナックの祖業であり、約6割の世界シェアを握る工作機械の数値制御(NC)装置を手掛ける。

第1四半期のFA部門の売上高は前年同期比19%増の654億円。過去に四半期ベースで最も多かったのが11年度の第2四半期で722億円だった。この時には連結営業利益率が45%にもなった。一方、今回の第1四半期の営業利益率は40%。依然として超がつく高収益であることに変わりはないが、FA部門以外の売上げが大きく拡大したことで、利益率はむしろ”低下”している。

上り調子は中間期まで

そうした中、ファナックはFA事業回帰の姿勢を明確にしている。昨年10月に従来の販売、製造、研究、経営の4本部長制を見直して以来、新設したFA事業本部長を稲葉善治社長が兼務。部門のトップとして舵取りを担っている。社員によれば、3月には稲葉社長から「NC装置のビジネスモデルは安泰ではない」という旨のメッセージが社内のイントラネットで掲示されるなど、発破をかけている。

ロボットは手間のかかるシステム案件が増えるほど収益性が落ち、ロボドリルはiPhoneの動向に振り回される。また、決算短信に、「一部のIT産業の短期的な需要増等を背景に期前半は好調に推移すると予想されるものの、期後半にはそれらの特殊需要の一巡が想定される」とあるように、会社側もロボマシン部門の勢いはじきに減速することを認識している。

となると、主力のNC装置でより高い成長を模索することが不可欠だ。幸い国内外の工作機械市場は上向いており、追い風となりそう。競合の三菱電機や独シーメンスにどれだけ対抗できるか。FA事業本部の指揮を執る稲葉社長の手腕がより一層問われそうだ。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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