東映アニメが携わる「日・サウジ合作映画」の狙い 「ジャーニー」で人材育成、エンタメ発展目指す
さらに古谷徹、黒田崇矢、三石琴乃、神谷浩史、中村悠一ら、日本を代表するといってもいい、名だたる声優たちが集まっている。サウジアラビアでも彼らの知名度は非常に高く、このキャスティングも、サウジ側からの熱烈なリクエストがあったという。
日本での公開形態は、日本語のセリフに英語字幕が付いたバージョンで、他国ではアラビア語の吹き替え版も同時に公開される。現時点ではアラブ首長国連邦、クウェート、バーレーン、オマーン、カタール、エジプト、レバノン、イラクなど、中東地域9カ国で上映されており、欧米をはじめとする他地域での上映も交渉中だという。
マンガプロダクションズは、サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が立ち上げた「ミスク財団」の子会社として2017年に設立。アニメーション、ビデオゲーム、マンガの制作および配給などのエンターテインメント事業をもとに、サウジアラビアの若者たちの才能の発掘・教育を行うことなどを事業内容としている。
サウジのエンタメ人材育成も目的
東映アニメーションと、サウジアラビアとのつながりは2011年、東映アニメーションの清水慎治顧問がサウジに招待され、当時はプリンスだったムハンマド・ビン・サルマン皇太子に出会った時にさかのぼる。日本のアニメーション、マンガ、ゲームなどが非常に大好きだというプリンスは、「ONE PIECE」をはじめ、「ゲゲゲの鬼太郎」「銀河鉄道999」など数々の有名アニメーションを手がけた清水顧問と意気投合する。そして、サウジアラビアと一緒にアニメーションを作れないだろうかと相談を受けたという。
ただ、すぐに本格始動というところまでは至らず、時だけが過ぎていった。しかし、先述したプリンスが皇太子となり、マンガプロダクションズのCEOにブカーリ・イサム氏が就任すると、再び合作の機運が高まる。
そして2017年11月、東映アニメーションとマンガプロダクションズが共同制作の協定を締結することにこぎつける。ちなみにイサム氏は、日本の早稲田大学で経営学を学び、在日サウジアラビア王国大使館文化アタッシェを務めるなど、長きにわたって日本に滞在してきた人物。そのため日本語も堪能で、コミュニケーションもスムーズだったという。
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は2016年に「サウジ・ビジョン2030」を提言。従来の石油に依存した経済を脱却し、教育、観光、エンターテインメントなど多様な産業を推進していくことを定めている。今回のプロジェクトもそのひとつに位置づけられる。
まず行ったのは、アニメーション制作を志望するサウジアラビアの若者11人を東映アニメーションに派遣すること。派遣先に東映アニメーションが選ばれた理由としては、サウジアラビアの人材育成プログラムに協力的だったということに加え、サウジアラビアの文化に理解のある清水顧問の存在も大きかったという。
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