夫婦別姓却下で考えた「家族は一体」という大誤解 最高裁が再び夫婦別姓認めない民法合憲と判断
いったいいつまで待てば、誰もが人生を通して生まれたときから使ってきた愛着ある姓を手放さずに結婚できる時代になるのだろうか。2021年6月23日、夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定は法の下の平等を保障した憲法14条と、両性の本質的平等を定めた憲法24条に違反するとして、事実婚夫婦が訴えた3件の家事審判の特別抗告審で、最高裁は合憲とする決定を出した。
この判断について、早稲田大学法学学術院の棚村政行教授は、取材に対して「問題を精査することなく合憲判断に終わってしまったことは、残念でならない。人権を守る最後の砦(とりで)としての、司法の役割を放棄するに等しい」としメールでコメント。その役割とは、「本決定多数意見は、憲法適合性の判断を避けて国会の議論にゆだねる」としたことと指摘する。
2015年には、個人の幸福追求権を保障した憲法13条などを根拠にした裁判で、最高裁は合憲としている。棚村教授は、今回の判断は研究者などが厳しく批判した「2015年判決を踏襲したもので、時代や社会の変化に逆行した、きわめて不当な司法判断と言わざるをえない」とする。
メディアも次々と夫婦別姓を特集
意識の変化は、夫婦別姓に関する論議が近年、世界的なフェミニズムムーブメントの影響もあり、非常に活発になっていることからもわかる。
NHKは今年2月18日に『ETV特集 夫婦別姓“結婚”できないふたりの取材日記』や5月24日『あさイチ』で、選択的夫婦別姓について取り上げた。当事者自身によるドキュメンタリーだったETV特集に関しては、取材された亀井静香氏が「国家の恩恵を受けたいなら、ルールに妥協しないと」などと発言したことに対してSNSで批判が巻き起こり、その後何度も再放送されている。また、高校生が事実婚の両親を題材にしたドキュメンタリーを2019年に制作し、NHK主催の放送コンテストの全国大会で入選している。
朝日新聞も、読者の投稿を集めたフォーラムページで何度も特集するなど、くり返し夫婦別姓問題を取り上げている。女性誌のシュプールもデジタル版で夫婦別姓を特集し、読者アンケートや歴史、諸外国との比較など踏み込んで解説している。
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