夫婦別姓却下で考えた「家族は一体」という大誤解 最高裁が再び夫婦別姓認めない民法合憲と判断
別姓を支持する人の割合は、各種調査でも年々増加している。内閣府の世論調査で選択的夫婦別姓制度を導入してもよいと答えた人は、2012年には35.5%だったが、2018年には42.5%に増加。2020年10月に棚村教授の研究室と選択的夫婦別姓・全国陳情アクションの合同調査では、賛成が70.6 %にもなった。
「どちらでもよい」という人もいるので、反対派も見てみよう。内閣府の2012年調査では、36.4%、2018年は29.1%が選択的夫婦別姓を導入する必要はないと回答した。朝日新聞社が2020年1月に実施した全国世論調査では24%、棚村教授らの調査では14.4%、シュプールでは8%が反対。つまり積極的に反対する人は少数にとどまるようになった。
国会ではこれまでまともな議論なし
法制審議会が、選択的夫婦別姓を認める民法改正案を法務大臣に答申したのは1996年、と四半世紀も前だ。しかし、国会ではこれまで、まともに議論が行われていない。また、昨年12月15日に自民党が了承した第5次男女共同参画基本計画案の改定案には、焦点となった選択的夫婦別姓に関する表現は、原案の「対応を進める」から、「さらなる検討を進める」へと大幅に後退した。
今年3月3日、参議院議員予算委員会では、丸川珠代男女共同参画担当相が福島瑞穂社民党党首から「なぜ選択的夫婦別姓制度に反対なんですか?」と質問されたが、7回も答弁を拒否。丸川担当相は、選択的夫婦別姓制度への反対を呼びかける書状に名前を連ねており、野党からジェンダー平等に取り組む閣僚としての姿勢が問われていた。
8度目の答弁は「家族の一体感について議論があって、これは家族の根幹にかかわる議論だなという認識を持った」と説明。国民は議論しているのに、政治家が国会で議論しないのは、丸川担当相などの自民党の保守派が「家族の一体感を損なう」と考えるからだ。
しかし、夫婦同姓は本当に家族の一体感を保つものなのか。そもそも家族に一体感は不可欠なのか。日本の現状と歴史から考えてみたい。
日本で夫婦同姓制度が導入されたのは、民法が施行された1898(明治31)年。明治前半は夫婦別姓だった。また、江戸時代まで庶民は名字すら持たなかった。だから、夫婦同姓は日本の伝統とは言えない。
世界を見渡してみても、夫婦同姓を強制する制度が残るのは日本だけである。2003年と2016年に、国連の女性差別撤廃委員会が制度の見直しを日本に勧告している。
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