米対中貿易赤字縮小の理由はトランプ税ではない 関税障壁により貿易戦争に勝利するのは難しい

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世界の貿易データに2020年前半から異常が現れた。中国が申告する対米輸出額が、米国が申告する中国からの輸入額を上回った。これは通常のパターンの逆で、米中貿易戦争の産物ではあるが、トランプ前米大統領の意図とは違うものだった。

逆転は中国の輸出業者と米国の輸入業者の両方による不正確な報告が原因である可能性が高いことを、連邦準備制度エコノミストの研究が示した。研究結果は、米国が関税を課すことで米中の貿易不均衡が是正されるというトランプ政権の主張を否定している。

通常、ある国に入る商品の金額は、輸出元の国を出るときの額よりも高くなる。輸入価格には通常、運賃と保険料が上乗せされるのに対し、輸出価格にはこれが含まれないためだ。米中間貿易でも20年2月まで、米国側の輸入額が中国側の輸出額を上回っていたが、3月以降ほぼ毎月、逆になった。

米企業は中国からの輸入額を過少に申告することで関税額を減らすことができ、中国企業は輸出額を過大報告することで付加価値税(VAT)の還付が増える。このため両国の業者は不正確な額を申告した。

連邦準備制度のエコノミスト、ハンター・クラーク、アンナ・ウォン両氏によれば、18年に双方が関税を課し始めて以来の米国の対中貿易赤字縮小の大部分はこうした不正確な申告によって説明される。

米国の対中赤字は20年に17年比で880億ドル(約9兆7500億円)減ったが、そのうち550億ドルは米企業の関税回避、120億ドルは中国企業のVAT還付額水増しを目的とした不正確な申告によるものだという。残りの約200億ドルの原因は不明。

エコノミストらは「貿易紛争による米中貿易収支への影響は米国のデータが示すよりもはるかに小さかった」とし、米輸入額の過少申告によって約100億ドルの関税収入が失われたとの推計を示した。トランプ氏の考えに反し、関税などの障壁によって貿易戦争に勝利するのは難しいことを裏付けている。

原題:Trump’s Tariffs Led to Billions of Losses, Fed Research Shows(抜粋)

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著者:Bloomberg News

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