NTT分割をもくろむソフトバンクの狡猾
しかし、自前の回線を失い、他事業者と価格競争を強いられる新NTTが、従来の利益を保つのは非現実的だ。孫社長は「利益は2000億円、1000億円になるかもしれない。そこは競争。それでもNTT東西の利益は、今の445億円よりも大きくなる」と反論する。
ただ、利益が1000億円に膨らむとしても、NTTが同意するのかは、大いに疑わしい。その程度の利益はNTTの自助努力でも射程圏内にあるからだ。
また、この案では分割しない場合の収益改善を織り込んでいない。実際には、年間約200万人のペースで加入者が増えており、大規模な投資も一巡。今後利益は拡大すると見るのが自然だ。
「日本の将来を真剣に考えて提案している」と、公平無私を強調する孫社長。
が、その言葉とは裏腹に、自社で設備投資を行わずにNTTのインフラに“タダ乗り”したいという、事業者としての思惑も否定できない。
ソフトバンク案は中立の第三者により、今後俎上に載せられる可能性がある。計画の実現性を客観的に検証したうえで、改めてNTTの組織形態を見直すべきだろう。
(桑原幸作 撮影:梅谷秀司、尾形文繁 =週刊東洋経済2010年5月29日号)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら