NTT分割をもくろむソフトバンクの狡猾
同社が提出した収益試算はこうだ。現在未整備の地域に光ファイバーを敷設する費用は2・5兆円。一方、NTT東西は銅線と光ファイバーという二重の設備を抱えており、これを光に一本化すれば年間3900億円かかる銅線の維持費が浮く。
当初は敷設費用が先行するが、10年程度で回収できるシナリオだ。過疎地域への敷設を促すために、事業者に支払う奨励金など、公費を投入する必要は一切ない。
また赤字の設備部門を手放すことで、新NTTの営業利益は、現在の445億円から3000億円超に大幅改善する。競争で価格が下がり、ユーザーは今のADSLと同程度の低廉な価格で、光ブロードバンドのサービスを受けられる。
5月13日に開かれた公開討論会で、孫社長はすべての関係者が得するバラ色の未来図を示し、「これが実現できれば誰も損をしない」と声高に訴えた。
ご都合主義の分割案 「NTTも得」は欺瞞?
だがざっと見ただけでも、この案にはいくつか問題点が散見される。
まず分割後の新NTTに残るサービス会社が、分割前と同じ収益を維持するという想定だ。営業利益445億円の内訳は、設備部門が2500億円超の赤字、サービス部門が約3000億円の黒字。この3000億円の利益が分割後も不変とする。