アサヒビールの挑戦:若者は「氷点下のビール」に振り向くのか?《それゆけ!カナモリさん》
長引くデフレ不況は、居酒屋の景色をすっかり一変してしまった。280円や380円の低価格均一価格居酒屋の隆盛である。それらの店で出されるのは、仕入れ値の安い「第3のビール」などの「新ジャンル」が多い。
アサヒビールは、新ジャンルが主力のスーパードライを侵食しないように、長く飲食店向けの「樽生」はスーパードライだけに特化し、新ジャンルを封印していた。しかし、大勢には逆らえず、新ジャンルの「クリアアサヒ」を苦渋の果てに解禁している。
今回は、飲食店向けには特殊サーバーまで開発し、家庭用にも専用の冷却キットを景品で提供するなど、例年にない力の入れよう(2010年3月13日付ダイヤモンド)というから、本腰をいれているようだが、0℃のスーパードライを体験した若者やオジサンが、のどごしを楽しんだ後に、「やっぱり、安い第3のビールで十分じゃないか」となりそうな気がする。
では、今回の試みは全く成果を期待できないのか。筆者は別の観点から、有意義だと思う。
ビールを飲むということは、単に「アルコールを摂取する」「酔っ払う」ためではない。まして、外食で飲用するということは、単に「モノ」としてビールを求めるのではなく、楽しい「コト」として対価を払っているのだ。
ビールは単に「のどの渇きを癒す」ための「モノ」ではない。「楽しいコト」の「触媒」である場合が多い。0℃のスーパードライにびっくりすることは、楽しいコトに他ならない。
ビールの飲用は「文化」である。若者に「文化」を伝え、さらにはオジサンにも、価格に変えがたい「楽しいコト」を思い出させるために、「アサヒスーパードライ エクストラコールドBAR」には大いに期待したい。
そして、「○○離れ」という言葉を徹底して払拭するため、若者のニーズを真にとらえようとするアサヒビールの心意気は、見習うべきところだろう。
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら