西武「サイクルトレイン」都内の日常風景になるか 自転車そのまま搭載OK、多摩川線で実証実験

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持ち込める自転車には制限があり、スタンドなしや長さ180cm・幅45cmを超えるサイズの自転車、原動機付き自転車は不可。「もっと大きな自転車も持ち込めれば……」といった自転車愛好者の声もあるようだが、サイズの制限は駅のエレベーターの大きさが理由だ。

車内ではベルトで自転車を固定する(写真:西武鉄道)

西武は過去にイベント列車としてサイクルトレインを走らせた例はあるが、定期運行の列車では今回が初。実施にあたっては、すでに実用化している西武グループの近江鉄道(滋賀県)や、西武秩父線との直通電車が走る秩父鉄道(埼玉県)の例を参考にしたという。これらの路線は、今回西武が行うのと同様に「車内に特別な設備なしで自転車をそのまま持ち込めるタイプ」(西武鉄道広報部)のためだ。

実証実験の舞台に多摩川線が選ばれたのは、日中の電車が比較的空いており、1両を持ち込み用車両に充てやすいことが1つの理由。背景にはコロナ禍で鉄道の利用者が減少していることもあるが、「これまで車で移動していたところを電車と自転車で動けるようにすることで、利用者の行動範囲を広げたい」(同)との狙いがある。また、是政駅から近い多摩川のサイクリングロードや面積40ヘクタールを誇る広大な都立公園、野川公園など、自転車愛好者向けのスポットが周辺にあることもポイントだ。

本格実施に向けて検討

実証実験は9月いっぱいまでの予定だが、同社によると基本的には実験結果を踏まえ、問題がなければその後本格実施する方向で検討中。「今回はスタンドなしの自転車は持ち込めないなど実験的な部分がある。実証期間中の利用動向やお客様の声なども踏まえたうえで検討する」(同)という。実現には、実証期間中の利用者のマナーなども重要なポイントになるだろう。

電車内にそのまま自転車を持ち込める(写真:西武鉄道)

当初、「大手私鉄初」と一部で報じられた今回のサイクルトレイン。実際には近畿日本鉄道(近鉄)が養老線(現・養老鉄道)で運行していたため大手私鉄初ではない。だが首都圏、しかも新宿駅から20km圏という都市部での実施は珍しいといえる。

自転車を分解するなどしたうえで袋に収納し、列車に載せて運ぶ「輪行」は以前から愛好者の間で行われてきたが、近年はそのまま載せられるサイクルトレインが増えている。

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