西武「サイクルトレイン」都内の日常風景になるか 自転車そのまま搭載OK、多摩川線で実証実験

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サイクリスト向けとしては、2018年に登場したJR東日本のサイクリング列車「B.B.BASE」(房総バイシクルベース)が人気を呼んでいる。自転車が搭載できるよう改造した車両を使い、週末などに房総半島各地へのコースを運行している。

JR東日本の「B.B.BASE」の車内。車両は専用で、自転車はラックに固定する形だ(編集部撮影)

一方、地方の鉄道では乗客増加策の一環として、イベント列車ではなく一般の列車に自転車持ち込みを可能としている路線が少なくない。今回、西武が参考にしたという近江鉄道や秩父鉄道もその例だ。

関東地方で長年実施している路線としては、上毛電気鉄道(群馬県)が挙げられる。同鉄道は中央前橋(前橋市)―西桐生(桐生市)間25.4kmを結ぶ私鉄。サイクルトレインは乗客増加に向けた策の1つとして2003年に試験的に始め、2005年4月から本格導入した。

持ち込み料金不要で全線全駅で乗降でき、平日は8時ごろから終電まで、土休日は終日と、大半の列車で利用できる。2両編成の後部車両が持ち込みスペースで、固定装置などはなく乗車中は利用者が手で押さえる形だが、これまで「とくに問題はない」(同社広報担当者)という。

同社によると、学校の閉校や通学生の減少などにより利用台数はピーク時の年間約4万台からやや減少し、2019年度は年間3万4000台。利用者層は通学よりも通院や買い物客などが多く、新たな利用を促進するうえでサイクルトレインの存在はプラスになっているという。また、「最近はツーリングの利用者が増えてきている」(同といい、自転車人気が追い風となっているようだ。

都市部でも普及する?

コロナ禍で鉄道の利用者が減る一方、通勤や日常の移動手段として人気が高まっている自転車。駅前の違法駐輪などといった問題点はあるものの、鉄道と自転車は親和性の高い移動手段だ。海外では都市部の地下鉄などでも自転車を載せて移動できる例が少なくない。

車内持ち込みのほか、近年は増加するシェアサイクルとの連携も進む。東急電鉄は5月から始めた定期券保有者向けのサブスクリプションサービス「TuyTuy(ツイツイ)」に、小型電動アシスト自転車を月5回使えるサービスを含めている。駅から目的地までといった短距離移動手段を確保する狙いだ。電車を利用する際の「ラストワンマイル」の足として、自転車の有効性は高い。

都心に直結する路線でないとはいえ、西武多摩川線の武蔵境駅は1日平均乗降客数が約3万人(2019年度)を数え、都市郊外の通勤路線としてラッシュ時は多くの利用者がある。コロナ禍で移動をめぐる環境が変化する中、「都市型路線」でのサイクルトレイン実証実験は、都市部や近郊でも「電車に自転車を載せて移動」するスタイルが広まるきっかけになるだろうか。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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