G7初陣の菅首相、「五輪開催支持に安堵」でよいか サミット帰国後に相次いで迫られる「決断」

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菅首相は今回のG7サミット出席について、「集中的に準備を進めた」(側近)とされる。事前に会談した安倍晋三前首相からは「G7は用意されたメモを読むのではなく、自らの言葉で語る必要がある」との助言を受けた。

そうしたことも踏まえ、菅首相は記者団に「今回、初めてサミットに出て非常に家族的だった。人との付き合いは最初は下手なほうだが、みんな目的は一緒なので非常に力まず、言いたいことを言えたと思う」と述べ、「菅流外交」に自信をにじませた。

ただ、サミットにつきものの衆人環視の中での首脳交流では戸惑いを隠せない場面も多かった。首脳全員の記念撮影やエリザベス女王との懇談など、首脳だけが参加する行事では、他首脳がそれぞれにこやかに会話をかわす中、菅首相は会話の輪から離れて作り笑いのまま、1人でたたずむ場面が目立った。

サミット帰国後に迫られる「決断」

今回のG7サミットの主役は、菅首相とともに初参加となるバイデン大統領だったことは間違いない。トランプ前大統領とは逆に、G7を軸とする西側先進国の幅広い協力関係構築に舵を切ったバイデン氏を欧州首脳も歓迎したからだ。

バイデン政権になってさらに緊張感が増す米中関係に、欧州各国も対応せざるをえなかった。「日本は地政学的にも米中の仲介役になれる」(外務省幹部)ことが、対中外交での菅首相の存在感アピールにもつながった格好だ。

14日午後に帰国した菅首相は16日の国会会期末に向け、野党が要求する会期延長などへの対応を二階俊博幹事長らと協議した結果、会期を延長しない方針を確認した。20日に期限を迎える10都道府県への緊急事態宣言の扱いは17日にも最終決断する見通しだ。月末までには五輪開催時の観客上限などの決断を迫られる。

五輪開催の可否と絡む緊急事態宣言の解除について、菅首相はG7閉幕後、「客観情勢を踏まえながら、専門家ともしっかり相談して決めたい」と語った。ただ、焦点となる東京での1日当たり新規感染者数は下げ止まっており、「極めて難しい判断」(政府筋)を迫られるのは確実だ。

9日の与野党党首討論に続き、G7サミットも「何とか乗り越えた」(側近)格好の菅首相だが、政権の命運が懸かる「勝負の6月」はなおも続きそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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