G7初陣の菅首相、「五輪開催支持に安堵」でよいか サミット帰国後に相次いで迫られる「決断」
菅首相の最大の目的はもちろん、開催まで40日を切った東京五輪へのG7首脳の全面的支持・協力の取り付けだ。初日の首脳会合で、菅首相は「大きな困難に直面する今だからこそ、世界が団結して難局を乗り越えていけることを日本から世界に発信したい」と五輪開催への決意を力説。各国首脳に「強力な選手団を派遣してほしい」と呼びかけた。
2日目の会合でも「万全の感染対策を講じて安心・安全な大会を実現する」とお決まりの言葉で決意表明した菅首相に対し、バイデン大統領が「オフコース・アイ・サポート・ユー(もちろんあなたを支持する)」と応じ、各国首脳も開催支持で足並みをそろえた。
2024年にパリ五輪を予定するフランスのマクロン大統領との個別会談で同大統領は、東京五輪の開会式出席を「楽しみにしている」と語った。アメリカは2028年のロス五輪を予定しており、米仏両首脳が東京五輪開催を支持したのは事前のシナリオどおりとみられる。
対中対応でも菅首相は「得点」
政府部内では「G7での五輪開催への発言ぶりは菅首相の判断」(外務省幹部)だったが、菅首相が各国首脳の開催支持取り付けに成功したことで、国内の反対論も抑え込めるとの声が相次ぐ。菅首相もG7閉幕後、記者団に「全首脳から力強い支持を頂いた」と満足気に笑顔を見せた。
五輪開催を前提とした観客制限についても「IOCや東京都、組織委員会などの5者協議で、国内感染の状況を踏まえ、他のスポーツイベントの人数の上限に準ずることを基本として6月に判断するのが基本」と述べ、観客を入れての五輪開催への手ごたえもにじませた。
菅首相は中国への対応でも「得点を稼いだ」(政府筋)という。アメリカが先頭となって進める厳しい対中外交を踏まえ、日米両国が求めた「台湾海峡の平和と安定の重要性」が首脳宣言に盛り込まれた。G7が中国と台湾の軍事的関係について宣言で言及するのは初めてだ。
この文言は、4月の日米首脳会談でまとめた共同声明に沿ったものだ。G7首脳会合での文言調整は日米首脳が随時協議したとされ、同行政府筋は「菅首相の貢献が大きかった」と胸を張る。
G7サミット閉幕を受け、ジョンソン首相は記者会見で「G7が民主主義と自由、人権の恩恵を世界に示す必要がある」と強調。これも踏まえ、菅首相は記者団に「普遍的価値を共有するG7として国際秩序をリードしていきたい」と語った。
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