「9社目転職か現職か」揺れる人に欠けている視点 働くうえで「行動に値する本当の動機」とは

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新しいことへの挑戦というと聞こえはいいですが、単なる現実逃避の理由付けとして使われるケースが非常に多くあります。現状が嫌だから、逃げ出したいから、とりあえず今と違う場所で違うことをしてみる。そうすれば何かいいことが起こるはずだ、という希望的観測です。

Fさんのケースがそうであるか否かは当然わかりかねますが、少なくとも前職(7社目の会社)においては一生やりたいと思える仕事内容であった、ということから仕事内容には満足していたものと思われます。

一方で、「売り上げの芳しくない2社の合併により先行きが不透明」だから転職、と書かれています。ということは当然のこととして、合併前も売り上げが芳しくなく先行きは個社としても元々不透明であったことがうかがえます。だとすると、合併によりいきなり不振になり先行き不透明というわけではなさそうです。

転職したかった「本当の動機」は?

そしてここで最初の質問に戻りますが、「転職したかった本当の動機」は何ですか?ということです。

現在の会社でもいろいろと理由は書かれていますが、今すぐ転職をするわけでもないことから、理由付けをしてみたけど、今一歩踏み出せる決定打にかける、といったところでしょうか。

おそらくそれは、それらの理由が本当の動機ではないからです。

本来8社も経験をしていれば、会社を見る目は非常に養われるはずですし、もっというと自分にとっての職業観、つまり仕事をするうえでの志や判断基準が明確になってくるはずです。

ご存じのとおり、100パーセント完璧な仕事や職場なんてものは存在しませんし、ましてや黙っていれば誰かがそういった環境を整えてくれるわけでもありません。100パーセント完璧な仕事がないことを理解したうえで、自分なりの努力によって完璧に近い仕事や環境に変えていくという気概が必要なのです。

つまり逃げるのではなく、立ち向かう気概です。

Fさんは、どこかにそういった完璧な職場や仕事があるはずだ、という前提に立ってしまっているのかもしれません。であれば、何度転職しようと、この後も同じことの繰り返しになってしまうでしょう。

何か気に食わないことがあれば、例えそれが自分が仕事を考えるうえで些細なことであっても、その場から逃げる理由にしてしまう。そしてそのことで自分を納得させる。そういった思考回路では、「そのときは」納得しても、本当の納得ではないがゆえにまた同じような不満や不安が出てくることとなります。

そういった無限のループを断ち切るためにも、今一度「何が自分にとって本当に大切なのか」「仕事をするうえで何が一番大切で、妥協できることは何か」、そういったことを整理し、考えてみましょう。そのうえで、現在の会社に留まるのか、転職するのかの判断をされるとよいと思います。

Fさんが、そういった自問自答を繰り返すことで本当の自分をより理解し、この先のキャリアの発展に役立てるであろうことを応援しております。

安井 元康 『非学歴エリート』著者

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やすい もとやす / Motoyasu Yasui

MCJ社長兼最高執行責任者(COO)。アニメーションの企画・制作を手掛けるベンチャー企業を経て、MCJにて東証への上場を経験。その後、経営共創基盤にて戦略コンサルタントして9年間活躍し、2016年3月にMCJに復帰。著書に学歴コンプレックスに悩みながらも独自の方法でキャリアを切り開いてきた様子を描いた『非学歴エリート』(飛鳥新社)や、自分ならではの人生を生きる術を描いた『極端のすすめ』(草思社)等がある。

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