日給3万「ワクチン仕事」に看護師が苦悶する理由 フリー看護師が見た「コロナ待遇格差」の実態

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そこに今、さらに医療従事者たちを戸惑わせる事態が起きている。それが、ワクチン接種に従事する看護師の大量募集だ。

求人情報を検索すると、東京23区の場合、日給1万5000円~3万円。東京・大手町の大規模接種会場の日給(9時~17時)は3万円だ。

「7月末までに高齢者すべてにワクチンを」の政府の掛け声に自治体も翻弄されているが、課題はワクチンの「打ち手不足」問題。その解消のためにもワクチン接種に従事する看護師の報酬が高止まりしているのだ。

日給3万円の「ワクチン仕事」に看護師が流れる

6月に入り、Aさんも1日、ワクチン接種の看護師を募集する派遣会社を通じて、接種業務を経験した。1日約400人を5ブースに分けて接種をする会場で、会場には接種を担当する看護師が5人、ワクチンを希釈する看護師が3人、接種後に体調不良が起きないか観察する看護師が2人という構成で、役割は午前と午後で交代したという。

この会場の日給は2万円。この条件の派遣会社のサイトを確認すると、10月末ごろまでの応募がすでに「募集終了」となっていた。Aさんが接種を体験した会場にはコロナ病棟をやめてきていた看護師もいたという。

Aさんはこう話す。

「もちろんワクチン接種は大事で、多くの看護師が必要なことはわかります。でも一方で、1年以上コロナ病棟で働く人たちの待遇はまったく改善されておらず、休みさえ十分に取れていない。まだまだ重症病棟や高齢者施設では日々亡くなっていく人もいる厳しい状況で、ここで働く人たちの待遇改善は急務です。

もちろんコロナ禍で、失業したりしている人のことを考えれば、仕事があるだけでもありがたいです。でも一部の職種だけがバブルのようになるのではなく、看護師全体の待遇の底上げをしてほしい」

浜田 敬子 ジャーナリスト

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はまだ けいこ / Keiko Hamada

1966年山口県生まれ。上智大学法学部国際関係法学科卒業後、朝日新聞社に入社。前橋、仙台支局を経て、93年に「週刊朝日」編集部、99年に「AERA」編集部へ。2006年に出産し育児休業取得。2014年に女性初のAERA編集長に就任。その後、総合プロデュース室プロデューサーを経て、2017年に退社し、「Business Insider Japan」統括編集長に就任。2020年末に退任して、フリーランスのジャーナリストに。 テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」やTBS「サンデーモーニング」などでコメンテーターを務める他、「働き方」などのテーマでの講演も多数行なっている。

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