日給3万「ワクチン仕事」に看護師が苦悶する理由 フリー看護師が見た「コロナ待遇格差」の実態

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「スタッフは自分から感染させてしまったと激しい自責の念にかられ、利用者の家族からも感染させたことを責められます。高齢者施設のスタッフはもともと待遇がよくないのに、自身も感染リスクにさらされながら働き、疲弊しています。こうした状況に、自身の家族から反対されて、退職を選ぶ人もいます」(Aさん)

幸い、Aさんら応援スタッフが入り、施設を感染リスクの有無でゾーン分けしたり、防護服の着脱を指導したりするうちに状況は落ち着いてきた。しかし、その中でAさんはこの1年弱感じてきた“矛盾”を再認識した。

Aさんは派遣元であるNGOから1日2万円という報酬を受け取っていた。1日12時間働いていたが、宿泊費など実費も別途、支給された。もともとその施設で働いていた職員の給料に比べると、フリーのAさんのほうがはるかに条件がよかったのだ。

フリーで働くことになったのは、昨夏、沖縄県知事が「看護師が足りない」と訴える姿をテレビで見て、募集に応じたことだった。それまでコロナについて医療従事者のグループで学んできたAさんは、そのことを活かしたい、という気持ちだったという。

過酷なコロナ病棟は、軽症者施設の「時給半分」

最初に派遣されたのは、沖縄県内の軽症者療養ホテル。基本は1日2度、療養者に電話をかけて体調の確認をする、重症化した患者を病院に送る、療養者が退所したら部屋を掃除する、などが仕事だった。時給は2700円、宿泊費・食費は別途支給された。

その後に移ったのが、沖縄県内の県立病院だ。コロナ専用病棟が立ち上げられた直後から約3カ月働いた。ここはAさんがこの1年弱で入った職場で、もっとも厳しい労働環境だった。昼ご飯を食べる時間もなく、朝から夜中1時まで勤務しているスタッフもいた。

いったん感染が少し落ち着くと、コロナ病棟のベッドは空く。しかし、ベッドを空けたままにしておくと、病院側の収益が悪化してしまう。そこで、病院側は他の救急患者を受け入れるため、感染リスクのある患者を受け入れるレッドゾーンを減らし、リスクのないグリーンゾーンに戻す。部屋の隅々から医療機材すべてをアルコールで拭きあげる作業も、看護師らが担っていた。

そこでの給与水準は、県立病院の規定報酬に沿っていた。沖縄の県立病院の2021年5月現在の募集要項を見ると、フルタイムの看護師で月額15万7700円~20万400円。パートタイムの場合、時給1009円~1282円だ。

つまりその前に働いていた軽症者用ホテルより、はるかに過酷な仕事にもかかわらず、時給換算だと半額で働いていたことになる。

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