出遅れ日本株は相場の移行期、秋口から上昇へ りそなAMエコノミスト・黒瀬浩一氏の市場予測

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ただ、市場にはオリンピックをやって大丈夫か、というムードがあるのでしばらく上値は重くならざるをえない。総選挙もあるので、オリンピックで感染者が増えたら選挙結果がどうなるのか、という不安材料もある。ただ、確たることは言えませんが、それほど感染が広がるとは考えにくい。選挙も政権が揺らぐほどの負け方はしないでしょう。受け皿がないですから。

秋口から年末に向けては日本の株価も上昇していくと思います。ワクチンの普及が早ければもう少し早く上がり出すかもしれません。バリュー株の上昇余地はそうとう残っている。株価については、年末にNYダウ平均株価は3万5000ドル、日経平均株価が3万2000円と予想しています。

ポストコロナは再びディスインフレを警戒か

――当面は株価の大崩れ、バブル崩壊といった展開は考えにくいのですね。

コロナ危機後の経済回復では、中国が先行してアメリカが後を追う形になっています。その中国はもう、景気対策を終了して、不動産バブルの抑制策、金融機関の不良債権処理、債務過多企業の破綻処理を進めている。例えば、中国の不良債権の受け皿会社である中国華融資産管理をどうするか、ということがテーマになっています。中国が景気をソフトランディングさせようとしているので、世界経済としても回復後は減速していくでしょう。

振り返ってみれば、コロナ危機の前、2019年末にはアメリカ経済の最大の課題は日本化の阻止だった。つまり、潜在成長率の低下やディスインフレ、長期停滞です。経済のリオープンで景気は回復するが、財政の崖を考えるとそこから先には非常に明るいシナリオは描けない。

だからインフレ、長期金利上昇といったリスクよりも、むしろ長期停滞論の世界に戻らないようにとFRBは考えている。前FRB議長のイエレン財務長官も、「物価は3%、4%まで上がってもいい。金融緩和を続けて高圧経済にもっていくことが必要だ」と言っています。最近はよいインフレならブレーキを踏むな、クリーピング・インフレーションは望ましい、という声がアメリカでは出てきています。

景気は回復するが急加速はせず、金融緩和が続くということになると、これはゴールディロックス(適温経済)です。なので、まだ株価はゆっくりとした上昇が続く。相場は、「金融相場」→「業績相場」→「逆金融相場」→「逆業績相場」というサイクルを繰り返します。今、金融相場から業績相場に移っていますが、過去に「逆金融相場」へ移行する際には、必ず金融政策が引き締めに転じるということがありました。なので、しばらくはまだ、逆金融相場への移行、すなわち株価が崩壊するということはないでしょう。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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