出遅れ日本株は相場の移行期、秋口から上昇へ りそなAMエコノミスト・黒瀬浩一氏の市場予測
ただし、問題はエネルギー。IEA(国際エネルギー機関)が化石燃料への投資は即刻停止せよというレポートを出しましたね。以前は2025年までは需要は増えると言っていたのに、世の風潮に合わせて変えてきた。これは危険です。なぜなら、再生エネルギーがいつまでにどこまで増えるかわからないのに、そうした計算をせずに言っている。ロシアのノヴァク副首相がそんなことをしたら、1バレル200ドルになると警告したが、たしかにリスクが大きいと思う。
一斉に脱炭素に舵を切りすぎて、石油の供給能力が不足してくるのではないかとの懸念が出てきています。そのうちに、脱炭素はコストがかかる、それを吸収するには賃金を下げるか株主利益を削るかだ、というような話になってくるのではないか。今の時点ではまだ1バレル70ドル台で、価格のコントロールができているが、100ドルを超えるような展開になると、問題視されてくる。エネルギーだけが不安材料で、これを除けば、物価はピークアウトに向かうと見ています。
日本株も業績相場へ、バリュー株に上昇余地
――FRBの政策はどのように動くと思いますか。
市場のコンセンサスは8月末のジャクソンホールでテーパリング(量的緩和の縮小)を示唆して地ならしをして、実際のテーパリング開始が年明け1月ぐらいから、というもの。おそらく、そんな感じだと思います。利上げは再来年以降になる。2013年のテーパリングではその後の引き締めへの転換を懸念して長期金利が1%以上も急騰してテーパータントラム(市場の癇癪)といわれたが、当然、そうしたことが起きないように配慮するでしょう。
テーパリングは証券の購入規模を縮小するだけなので、金融緩和状態は続くわけです。2013年当時もその後は金利が低下して、2015年末に実際にFF金利を引き上げるときには長期金利はテーパータントラムの前の水準に戻っていた。
――日本の株価は5月中旬にハイテク株が大きく下げてから、冴えない動きが続いています。先行きをどう見ていますか。
ワクチンの普及でリオープン(活動再開)が進むと、グロース株が下がってバリュー株が上がる。以前もお話ししたように、金利が上昇する局面ではグロースが弱くなってバリューが強くなります。アメリカではすでに輸送株指数が大きく上がっているが、日本ではまだ航空株に見るように非常に出遅れている。しかし、日本でも株価は横ばいの中で、グロースからバリューへの入れ替えが激しく起きている。バリューの代表格が銀行、不動産、REITですね。
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