「ワンマン」列車、全ドア降車なぜ普及しないのか 欧州で当たり前の「セルフ乗車方式」を採用すべき
公共交通の評価のポイントは利便性だ。路面電車には低床車が増え鉄道線でもホームと車両床面の段差が小さくなって、乗降はバリアフリーになった。しかし、「最寄りのドアから乗って最寄りのドアから降りる」というもう1つのバリアフリーを満たさない「在来型」のワンマンが今も走っている。
「お降りの方はいちばん前のドアをご利用ください」というあれだ。ベビーカーを伴って、あるいは、車椅子での利用は難しく、ドア1カ所での降車は不便で時間がかかる。
「ワンマンだから不便でも仕方ない」でよいのだろうか。
鉄道線の「ワンマン」はどうなっている?
ワンマンには3形態がある。
「在来型」ワンマンは、運転士が運賃を収受する。1954年に路面電車で始まり、1971年には鉄道線の無人駅化の次の収支改善策として導入された。当初は、小型車両の1両運転だったから不都合はなかった。ところが、今では長さ27mの連接路面電車や2両連結で長さ40mの鉄道線列車にも導入されている。
「都市型」ワンマンは、地下鉄線や都市鉄道線に導入され、駅で運賃を収受するからワンマン化しても利便性にはなんら変わりがない。近年は、無人駅を機械化した地方線区にも導入されている。
「セルフ乗車型」ワンマンは、「セルフ乗車(わが国では信用乗車とも呼ぶ)」を採用した方式で、運賃収受を運転士が肩代わりするのではなく、乗客がセルフサービスで行う。1960年代半ばにスイスで始まり、1970年までに西欧に、次いで北米、東欧、香港、台湾に普及した。乗り場または車内ドア近くに設けた切符消印器(日時等を印字。近年ではICカードのリーダ・ライタ)によって改札する。運転士が運賃を収受しないので、すべてのドアで乗降できる。路面電車・ライトレールの運賃収受の世界標準となり、路面電車は利便性と輸送力の高い輸送システムに変身した。わが国では、広島電鉄市内線の一部車両と福岡市内BRTバスが、IC乗車券に限定して採用している。
路面電車のワンマンについては、2020年4月3日付記事(富山LRT、直通運転で消えた便利な「セルフ乗車」)、2019年1月13日付記事(路面電車の弱点「運賃支払い時間」は解消可能)などですでに説明しているので、今回は鉄道線のワンマンについて述べる。
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