「ワンマン」列車、全ドア降車なぜ普及しないのか 欧州で当たり前の「セルフ乗車方式」を採用すべき
和歌山線の王子—五条間(35.4km。全13駅、うち無人の5駅は機械化無人駅)にも、桜井線と同じ残念なワンマン列車が走っている。ところが、沿線施設の従業者か来場者が大量に降車する列車や、下校高校生の一群がホームで待っている場合には、「すべてのドアがご利用できるように変更します」と自動放送して全ドアを開くことが、日常的に実施されている。
駅の案内掲示に、「4両ワンマンはすべてのドアが開きます(和歌山線のみ)」とある。王寺16時02分発の五条行4両編成に乗車した。この区間の無人駅はすべて機械化無人駅で、その到着前の案内放送は「すべてのドアがご利用いただけます。切符・運賃は駅の集札箱に入れていただき、イコカなどは駅の改札機にタッチしてください」だ。2007年まではスイッチバック駅だった山間の1面1線の北宇智駅(ログハウス風のミニ駅舎に簡易型IC改札機、券売機、集札箱を設置)でも、全ドアで乗り降りできる。
全国のJR線と私鉄線には機械化無人駅(自動改札ゲートまたは簡易改札機を設置)を擁する線区での「都市型」実施例はたくさんある。
「セルフ乗車」は朝夕だけ
227系1000番台の車両には、車載型IC改札機(タッチ部と残高表示部のみ) の乗車用が全ドアの脇に、降車用が運転室後ろに設置してある。和歌山線の五条—和歌山間(53.5km、全24駅)の無人駅(券売機のみ設置)17駅では、IC乗車券で乗降する際にはこれにタッチし、切符の場合は最前部の運賃箱に投入する。
朝夕はすべてのドアを使用する。IC乗車券に限定ながら朝夕は「セルフ乗車」が実施されているのだ。ただし、降車用IC改札機は各社の運転席の後ろだけに設置されているため、降車客が集中する高等学校最寄りの無人駅には、出場用の簡易IC改札機が駅に設置してあり、無タッチで降車した場合に備えている。全ドア脇に降車用も設置してタッチ降車に統一することが望ましい。また、切符の最前部運賃箱への投入も不便であり、少なくとも降車用改札機の隣に集札箱が必要だ。そして、昼間は利用者が少ないとはいえ、最前部のドアだけで乗降する「在来型」としているのは残念だ。
簡易型改札機と車載型改札機には不正乗車を抑止する機能はない。こうした改札機で乗客が自律的にセルフサービスで改札する(運賃を支払う)、これが、「セルフ乗車」だ。乗客の公徳心・公共心に頼る方式であるがゆえに、不正乗車誘発の懸念ありとして、わが国では導入についての議論や検討すら劣後されてきた。その「セルフ乗車型」ワンマンが、一部の列車ではあるが実施されている。桜井線、和歌山線は、先進路線なのだ。しかし、大多数の列車には「在来型」の乗降スタイルを存留しているのは、不正乗車の懸念からであろうか。
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