「ワンマン」列車、全ドア降車なぜ普及しないのか 欧州で当たり前の「セルフ乗車方式」を採用すべき

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IC乗車券エリアの拡大を目的に無人駅にも改札機が設置され、既設の券売機とあわせて機械化無人駅化が進んでいる。また、利用者が少ない線区用に車載型IC改札機を搭載した車両が登場している。

こうした線区のワンマン列車の近況を観察するために、新型コロナウイルスに関する3回目の緊急事態宣言が大阪府ほかに発出中の5月に、JR西日本の桜井線と和歌山線を数次にわたって訪ねた。

「在来型」だが、運転士は運賃収受せず

桜井線(愛称は万葉まほろば線。奈良—高田間29.4km)の全14駅のうち10の無人駅には、2005年に簡易型IC改札機(タッチ部と残額等の表示部だけ)が設置され、IC乗車券ICOCA(イコカ)エリア線区になった。2019年3月から新鋭車両227系1000番台(全長20m・3ドア車両の2両連結、列車全長40m)が順次投入され、この線と和歌山線の旧型車両が淘汰された。

奈良駅1番線に停車中の桜井行きを観ると、1両目は座席が埋まり2両目はガラガラであることから、「在来型」であることが判る。しかし、運賃箱は運転室内に格納したままでドアが閉めてある。掲示に、「新型コロナウイルス感染拡大防止のため、運転室の扉を閉めさせて頂きます。切符・運賃については、駅の運賃箱にお入れください」とある。

定刻に発車。次の京終駅は無人駅。車内放送は「後ろの車両のドアは開きません。前の車両のいちばん前のドアをご利用ください。切符・運賃は前の運賃表でお確かめの上、運賃箱へお入れください」と、「在来型」の案内だが、運賃箱は使えない。続いて「ICOCAなどのIC乗車券は、いったん運転士にご提示の上、駅の改札機にタッチしてください」と言うが、IC乗車券は見ただけでは有効かどうかは判らない。

京終駅に近づくと降車客が後ろの方からいちばん前に移動してきた。前の車両のいちばん前と後ろの2つのドアだけが開く。降車客はIC乗車券の提示も何もせず、運転士も着席したままで何もしない。後ろのドアから降車する人もある。どの無人駅でも同じ。列車は桜井駅に到着、有人駅だから全ドアで降車する。

いくつかの無人駅を観察した。ホームには1両目の後ろのドアの位置に「2両ワンマン乗車位置」の表示があるが、ここで降車する人もある。駅の出口に近いドアから降りたいのは誰しもだ。簡易型IC改札機(出場用と入場用)ときっぷ・運賃箱(郵便受けのような箱)、および券売機が設置してある。降車した誰もが、ちゃんとIC乗車券をタッチし、切符を切符・運賃箱に入れている。乗車する人は券売機で乗車券を買い、あるいは、IC乗車券をタッチして入場している。つまり、この線区の無人駅は機械化無人駅であり、駅で運賃を収受しているから、実質は「都市型」だ。なのに、「在来型」の乗降スタイルを要求している。残念なワンマン列車だ。

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