KDDI「高額スマホ販売」でショップ評価の大問題 総務省の改善要請に対し繰り出した「別の手法」
業界関係者への取材を通してわかるのは、携帯大手が店頭で高額端末を売りたい理由はほかにもありそうだということ。例えば、携帯各社が端末メーカーに仕入れる際、「一定以上の量を買うから安くして」などと交渉し、実需に合わない量の端末を仕入れている可能性だ。
通信各社にとって、代理店に卸売りできなかった端末は不良在庫となり、端末評価損として業績に悪影響を及ぼす。当然ながら高額な端末ほど一般に仕入れ値は高く、不良在庫になった場合のダメージは大きい。
いずれの理由にせよ、KDDIには高額端末を数多く売りたい事情がありそうだ。一方、代理店の側には本来、客のニーズや利用実態を無視してでも高額端末を売る強い動機はない。携帯各社は販売代理店に対しスマホ端末を定価と同額(原価率100%)で卸しており、代理店が端末販売で粗利を稼ぐのは難しいからだ。
こうした高額端末販売を推奨するような制度は、KDDIだけが行っているわけではない。ソフトバンクの代理店関係者によると、ソフトバンクでも特定の高額なスマホ端末を売るほど評価点が高くなる代理店評価施策を導入しているという。
「回答を差し控える」
高額な端末販売を推奨する施策の何が問題なのか。携帯電話の問題に詳しい野村総合研究所パートナーの北俊一氏は「通信業界は商品やサービスがわかりづらいうえに移り変わりも早く、情報の非対称性が強い。店頭の案内を頼りにする人が多いのにもかかわらず、KDDIの代理店施策は顧客本位であるとは言いがたい」と指摘する。
東洋経済はKDDIに対し、今回導入した端末販売の評価がまた不適切な販売につながるのではないかと質問したが、「営業戦略上の観点から、評価制度の内容については回答を差し控える」(広報)と話すにとどめた。
消費者保護の観点から大容量プラン獲得率の測定をやめるよう迫った総務省に対し、その是正で応えつつも、別の手法を繰り出してきたKDDI。まさにイタチごっこの様相だ。
KDDIが5月14日に発表した2021年3月期決算では、営業利益が1兆0373億円、営業利益率にして19.5%と、収益性の高さを示した。2022年3月期も最高益更新を計画しているが、その稼ぎ方をめぐっては、公共の電波を使用してビジネスを営むインフラ企業としての姿勢と責任が問われる。
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