失注が一転「中国製」欧州向け電車、突如登場の謎 実は「秘密裏」に進んでいた中・欧の共同開発

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このようにヨーロッパ地域内においては、まだ十分な実績を残していると言えるほど多くの車両が営業運転を行っているわけではなく、とくに認証テストの難易度が高い西・中欧地域においては、クリアするまで長期間にわたって営業開始できない可能性もある。

今回の新型2階建て電車は、2023年夏~秋ごろの営業開始を目指していると発表されたが、これは最速でという意味で、実際には進捗状況により、さらに数年先延ばしになる可能性も考えられる。わずか18カ月でどんどん車両を建造できても、走る許可が出ないのであれば意味のない話だ。

このように営業開始時期がまだ不透明な車両を導入した場合、計画が大幅に狂ってしまう可能性は否定できない。ウェストバーンの場合、従来車を他社へ譲渡する話まで決まっている以上、もし納入が遅れればその影響はほかへも波及することになる。そこで確実な方法として、現行車両の増備車を導入する、というのが一番手っ取り早い解決法となる。CRRCの新車が使い物になるかどうかを見極めるまで、しばらくは現行車両に頼らざるをえないだろう。

そしてもう一点、最も注目したい点は、このCRRC製の6両編成4本24両の車両は、ウェストバーンが購入したものではなく、CRRCが保有し、それをリースするということだ。シュタドラーと新たに契約した「KISS 3」はリースではなく、同社が購入した完全な自社保有車両なので、この違いは非常に興味深い。

欧州で高評価を得られるか?

おそらく、ウェストバーンは今すぐにもCRRCと手を組みたいと考えているだろうが、前述のとおり現状はリスクが非常に高い。そこで、まずはお試し期間としてCRRCとリース契約を取り付け、実際に営業で使ってみたうえで、もし気に入れば車両を買い取り、追加投入も検討する、という構図が見えてくる。

リース車両の買い取りは、このケースに限らずヨーロッパでは一般的で、リース契約満了後に鉄道会社が車両を引き続き使いたい場合、契約を継続するか、そのまま車両を買い取るかを選択できるオプションがある。不要と判断した場合、リース終了後に返却することもできる。自家用車のリースとまったく同じ方法である。

ハンガリー鉄道貨物部門向けの「バイソン」(筆者撮影)

CRRC側にしても、ヨーロッパでの実績がないことは重々承知しており、とにかく今は自社製品を広く知ってもらうことに注力しなければならない。このウェストバーン向け車両だけではなく、ハンガリー鉄道貨物部門向けの機関車も同様にリース契約で、フルメンテナンスと将来的な買い取りオプションも含めている。

だが、CRRCにとってはこれからがいよいよ正念場となる。リース期間中に高評価を得て、追加発注を取り付けるができれば、徐々にヨーロッパ地域で受け入れられることになるし、逆に評価を落とせば、ヨーロッパ進出は夢に終わることになるだろう。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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