失注が一転「中国製」欧州向け電車、突如登場の謎 実は「秘密裏」に進んでいた中・欧の共同開発

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車両製造については、ウェストバーンとCRRCが共同で開発を進め、中枢となる部品をヨーロッパで調達するということに、特に細心の注意を払って設計・製造を進められたと説明している。ただ、ウェストバーンはドアと連結器に関してはヨーロッパ製であることを明言しているものの、その他のパーツ、例えば電装品や信号装置、空調設備などに関しては現時点では回答できないとの返答だった。

CRRC製2階建て電車は、両先頭車2両が動力車、中間車4両は動力のない客車となっている(2M4T)。相互運用性の技術仕様(TSI/A technical specification for interoperability)に準拠し、最高速度はウェストバーンでの営業運転速度に合わせ、時速200kmで設計されている。

興味深いのは、車体の一部にカーボンファイバー製のパーツが用いられている点で、通常の平屋構造の車体と比較して、重量は約10%の増加にとどまっている。以前、イノトランスのレポートでもご紹介した、オールカーボンファイバー製の試作車両「CETROVO」を覚えている方もいらっしゃるだろうが(2018年10月5日付記事「中国が躍進『鉄道見本市』、実車展示で存在感」)、ここで車体の一部にそのカーボンファイバー製を採用してきたことは注目に値する。ダークグレーの座席を含む内装は、既存車両に近いイメージだが、木目調となった壁面化粧板が温かみのある印象を受ける。

スイスメーカーとの契約とは別物

DEMU2と称するこの新型車両は、本国オーストリアのほか、ドイツやハンガリー、その他5カ国での営業運転を予定している。搭載されている機器の電圧は、交流15kV 16 2/3Hzおよび交流25kV 50Hzの2種類のみであるため、ルーマニア、ブルガリアやセルビアの他、チェコ、スロヴァキアの一部地域といったあたりが考えられる。

今後は、2021年夏ごろをメドにヨーロッパへ向けて出荷され、夏の終わりからチェコのヴェリム試験センターでテスト走行を開始、2023年の夏~秋ごろに営業運転を開始する予定となっている。

今回の突然の発表には非常に驚かされたが、いくつか興味深い点がある。

ウェストバーンが現在運行しているスイス・シュタドラー製の2階建て電車「KISS」(筆者撮影)

まず、ウェストバーンはすでにシュタドラーから新車を購入する契約を結んでいたことで、今回のCRRCとの契約は、それとは別に存在するという点である。

もともと、同社は民間鉄道会社として旗揚げ後、同じシュタドラー製2階建て電車「KISS」を6両編成8本導入し、その後の増発時に増備された「KISS 2」4両編成9本を合わせ、計17本の「KISSシリーズ」を保有していた。

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