月9で「戦隊モノ」のようなドラマが量産される訳 時代は恋愛よりもヒーロー群像劇を求めている

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『イチケイのカラス』についても「ぜひご家族の皆さんでご覧いただき、元気になっていただいて、この先1週間の糧に」と後藤博幸プロデューサーがコメント。

テレビマンがドラマの企画書なんて書かずに自分の好きなものを作っていた昭和はとうの昔に過ぎ去り、現在は分厚いプレゼン資料を用意し厳しい企画会議を経た上で、なるべく幅広い年代の人に見てもらえるよう気を配らなければいけない。

同時に、ファミリーを意識したドラマ作りは、昭和のような“お茶の間”に回帰してきているとも言える(実際には家族がそれぞれの個室で見ているとしても)。だからこそ子どもにもわかりやすいヒーローものが作られるのだ。

コロナ禍で医療従事者がヒーローに

そして、医師ものの中でも救急救命チームが取り上げられるのは、コロナ禍がダイレクトに関係している。昼も夜もなく、新型コロナウイルスの患者を受け入れてきた医療従事者に感謝する気持ちが高まり、彼ら、彼女たちをヒーローとして描くドラマは今、最も共感できる題材だ。『TOKYO MER』の脚本家・黒岩勉はこう述べている。

「コロナ禍におきまして、人間の一番キレイな部分といいますか、心を動かされる瞬間というのは、自己犠牲を払って他の誰かを助ける姿なのだなと改めて思いました。こんな時代だからこそ、誰かのために必死に戦うヒーローが見たい」(番組公式サイト)

ただ、いかに時代の空気にフィットしたものでも、同じフォーマットのドラマばかりが放送されると、多様性がなくなってしまう。

そんな中、4月クールで大人向けのシニカルな喜劇を展開した『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系)や、20代男女のほろ苦い青春の終わりを描いた『コントが始まる』(日本テレビ系)は、ドラマ本来の面白さと可能性を感じさせた。

月9も2022年1月からは人気コミックを原作とする菅田将暉主演の『ミステリと言う勿(なか)れ』を放送すると発表。これは『古畑任三郎』のような名探偵もので、お仕事チームものから久しぶりに脱却。マンネリ化も避けられそうだ。

小田 慶子 ライター

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けいこ おだ / Keiko Oda

テレビ誌編集者を経てフリーライターとなる。日本のドラマ、映画に精通しており、雑誌やWebなどで幅広く活躍中。

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