新幹線「運転中のトイレ衝動」どうすべきだったか 体調不良によるトイレは認められているが…

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今回は8号車の車掌室にいる車掌長を運転士が呼び出したが、運転資格を持ち合わせなかった。運転士は指令に報告するという手順を踏まなかった点だけでなく、運転資格のない車掌に交替を頼んだ点で誤った判断を重ねることになった。

一方で新幹線の乗務員は、運転士が期間限定で車掌乗務を行うことがある。列車長と呼ばれ、JR東海によると「車掌長800人のうち500人が運転士の資格がある」という。こうした列車長が常に乗り込むシフトを組むことができれば、運転士に不測の事態が起きても、列車を臨時停車させることなく、運転士を交替することができる。

新幹線は常に安全サイドに傾くようにシステムが作られている。自動列車制御装置(ATC)は、仮に運転士が意識を失ったとしても、速度を検知して非常ブレーキが働き、列車が止まる。乗客の安全は守られるが、運転士の体調不良とは笑い話になるトイレ衝動だけとは限らない。

Aさんは言う。

「安全を考えた場合には、運転資格を持つ車掌も1人以上いたほうがいいと思いますね」

「トイレに行けない」雰囲気があるのか

金子社長は赤羽国交相に対して、「あってはならないことで申し訳なく思っています」と謝罪。赤羽大臣はこう語った。

「安全に関するルールが必ずしも守られなかったという現象をどうとらえるかが大事だと思います。こうした現象がなぜ起こったのか。そうした雰囲気が社内にあるのではないかとか。ゆるみがあってはならないし、世界でいちばん安全な鉄道ということで、そこはしっかりとJR東海をあげて、安全神話に陥らない取り組みをお願いします」

トイレ問題からどういう教訓を引き出すことができるのか。JR東海の社内に「トイレに行く」と言いづらい雰囲気があるのか。同社はこう回答した。

「いかなる状況においても安全を最優先とする行動がとれるよう、社員一人ひとりに、より一層浸透させていきます。また、再発防止策として、全乗務員に対して面談を実施し、職責の重要性や正規の取扱いの必要性等を徹底するとともに、乗務中の生理現象における正しい取り扱いについて再徹底を行います。加えて、取り扱いを具体的にフローで示し、理解を深める指導を進めています」

また、国交省鉄道局安全監理室は、「(交代要員を乗務させるか否かには)それぞれの鉄道事業者によって違いがある。今回のような場合、まずは列車を止めることが最優先」(同室長)という考え方で、事実関係を精査中だ。

中島 みなみ 記者

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なかじま みなみ / Minami Nakajima

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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