新幹線「運転中のトイレ衝動」どうすべきだったか

体調不良によるトイレは認められているが…

Aさんはトイレ衝動に襲われた運転士に同情的だった。だが、今回のことに限ると理解しがたいことがあると話し出す。

「状況から考えると、どうして小田原駅の停車中に用を足したいと指令に言わなかったのかということです。」

「もし熱海で止めると後続列車が詰まるが、小田原の停車中に用を足していたら、後続列車は本線を通過できるわけです。そういうことを考慮すれば、あの状況からして止めるなら小田原で。体調が悪いのでトイレに行かないと運転できませんと指令に言えば、小田原の停車中にトイレに行くことが可能だった」

運転士の離席は、三島駅を1分以上遅れて通過した原因を指令が運転士に問いただしたことで発覚した。新幹線の運行は秒単位だ。それが運転士のプレッシャーになっていたのではないか。そんな疑問をAさんにぶつけてみた。その返答はこうだった。

「私は乗務経験も指令経験もあるから両方の気持ちがわかる。でも、この件は大前提として、乗務員のルール違反。臨停(臨時停車)をかけることはできたのです」

“乗務員疾病”の規定もある

今回の件を残念がるAさん。その根拠は列車の運行を管理する指令に「トイレ衝動」を伝えなかったことだ。

5月21日、赤羽国交相(左)に報告するJR東海の金子社長(筆者撮影)

「指令員もふだんは定時運行第一という意識は持っています。ただ当然、線路、車両、乗務員のエラーの対応の方法も勉強している。極端にいえば腹痛は下痢と限らない。重大な病気の前触れかもしれない。お客様だけでなく、乗務員に対しても、そういう意識を指令は持っているから躊躇なく判断します」

指令の判断を後押しするのが、乗務員規定だ。

「体調不良などやむをえない場合は“乗務員疾病”という項目がある。乗務員が勝手に列車を止めると完全に乗務員のミスになりますが、乗務員規定に基づいているのであれば、列車がたとえ10〜20分遅れたとしても、乗務員の責任にはならない。指令は運行状態を把握するためにいるのだから、何でも言ってくれ、ということです」

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