さらに最大手のファイザーは、資金力に自信があったので公的資金を受け入れなかった。そのうえで独自にワクチンを完成させたのだが、これもアメリカ政府による先行買い入れの対象となった。昨年秋、未承認の段階でファイザーに対して1億回分(5000万人分)のワクチンを発注している。これまた思い切った手段だが、これでファイザーも晴れてOWSの仲間入りとなった。「メンツにこだわらない」というのも、有事には重要なことである。
アメリカの感染症対策には「軍事面での蓄積」
ちなみにアメリカで緊急承認が下りたのはファイザー、モデルナ、ジョンソン・エンド・ジョンソンの3社である。アストラゼネカの分は下りていない。もったいない話にも思えるけれども、ここは監督当局のFDA(食品医薬品局)が筋を通しているのであろう。
OWSにはFDA以外にも、CDC(疾病対策センター)、NIH(国立衛生研究所)、BARDA(生物医学先端研究開発局)、HHS(保険福祉省)など多くの省庁が参加している。が、COOとして指揮を執ったのはギュスターブ・ペルナ陸軍大将であった。有事対応であるから米軍が元締めとなり、トップは軍人なのである。これも日本では考えにくいことであろう。
アメリカでは2001年に炭疽菌テロ事件があり、以降はバイオテロリズムへの備えがなされてきた。当時、外交シンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)が”Dark Winter”(暗い冬)というシミュレーションを実施して、注目を集めたことを懐かしく思い出す。アメリカの感染症対策には、軍事面での蓄積があったことを忘れてはならないだろう。
かくして、わずか1年で複数のワクチンが開発され、しかもかなりの量が完成したお陰で、アメリカの感染者数は激減している。この調子でいけば、来月の独立記念日(7月4日)には、文字通りコロナからの独立を果たせそうである。当日の花火は賑やかなものになるだろう。皆が一斉にマスクを捨てる、といったパフォーマンスがありそうだ。
ちなみにOWSをスタートさせたトランプさんは、3月10日にこんな声明を発表してボヤいておられる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら