今こそ再認識すべき「ワクチン望まぬ人」への配慮 接種は法律で義務づけられているわけではない

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また今回の予防接種法改正時の国会の付帯決議においても、

「政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

一 新型コロナウイルスワクチンの接種の判断が適切になされるよう、ワクチンの安全性及び有効性、接種した場合のリスクとベネフィットその他の接種の判断に必要な情報を迅速かつ的確に公表するとともに、接種するかしないかは国民自らの意思に委ねられるものであることを周知すること。

二 新型コロナウイルスワクチンを接種していない者に対して、差別、いじめ、職場や学校等における不利益取扱い等は決して許されるものではないことを広報等により周知徹底するなど必要な対応を行うこと」

としている。

予防接種が強制ではないこと、予防接種をしていないことを理由にした差別、いじめ、職場や学校などでの不利益な取り扱いは許されないのだ。

職場や学校の対応として注意すべきこと

このように、ワクチンの予防接種は強制ではなく、同意に基づいて行わなければならないと法律上は明確にされている。

だが、実際の職場などの現場においては、ワクチン接種の機会があるのにワクチンを接種しないという選択は、事実上困難かもしれない。とくに、職場や学校で一斉に予防接種が行われるような場合、強制ではないと言っても、事実上、ワクチン接種をしなければならない圧力を感じてしまうかもしれない。

例えば、職場においてワクチン接種を社員に義務付けてワクチン接種を拒否した社員の出社を拒否する、ワクチン接種をしていない社員だけを在宅勤務にするなどの取り扱いをする企業が出てくる可能性がある。

しかしそのような取り扱いは、ワクチン接種が強制ではない以上、許されない。企業側は、感染防止対策という社員の安全の観点から業務命令としてワクチン接種を義務付けようと考えるかもしれないが、法律上、予防接種は強制ではない以上、そのような業務命令は違法、無効となる。

学校においても、ワクチンを接種しない生徒、学生の授業への出席を認めないなどといった措置をとることも考えられるが、同様に、ワクチン接種を強制できない以上、そのような取り扱いをしてはいけない。

また老人ホームなどの施設においても、ワクチン接種を拒否した入所者に対する差別的な取り扱いや、利用契約を解除して退所を求めるなどといったことも許されない。

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