松屋はなぜ"プレミアム牛丼"で勝負するのか キーワードは「米国産牛肉の輸入規制緩和」

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確かに、プレミアム牛めしを食べてみると、従来の牛めしとはまったく別物、という印象を受ける。牛丼の肉特有のスジっぽさはないし、臭みやエグみもほとんど感じられない。ライバルである吉野家の開発担当者も「試験導入していた吉祥寺の店で食べたが、率直においしかった。肉質が向上しているのもわかった」と認めるほどだ。

規制緩和の思わぬ恩恵

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緑川社長は「別次元の旨さ」を強調した

この“肉質の向上”につながったチルド肉の導入も、実は米国産牛肉の規制緩和と大きな関係があった。

製品として出荷できるのは、おおむね月齢16カ月以降の牛。従来の月齢20カ月以下という規制があれば、前年の春に生まれた牛が十分に成長してから規制の範囲内で屠畜するには、夏から秋にかけての4カ月しか余裕がなかった。

フローズンの場合、この4カ月間で年間使用量を生産・冷凍すれば、通年分の仕入れ量を確保できた。だが、チルドは品質が保持できる期間がフローズンに比べると極端に短いため、4カ月間で通年分を生産し保存しておくことは不可能だ。

ところが、月齢30カ月以下に規制が緩和されたことで、屠畜できる期間は一気に14カ月へと拡大した。これにより、通年での屠畜・生産が可能となり、いつでも牛肉を確保できるようになった。

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先に値上げを打ち出した吉野家はどう対抗するのか

つまり、プレミアム牛めしは、月齢30カ月以下への規制緩和をめぐる2つの誤算(牛肉価格が下落しなかったことと、チルド肉の通年調達が可能になったこと)によって生まれた商品と見ることができる。

消費増税への対応では後手に回った感のあった松屋。だが、米国産牛肉の規制緩和への対応では、逆に大手2社に先行する格好となった。松屋が舵を切ったプレミアム路線に、すき家と吉野家はどう対抗するのか。牛丼業界の三つ巴の争いは新たなステージに入った。

猪澤 顕明 会社四季報オンライン 編集長

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いざわ たかあき / Takaaki Izawa

1979年生まれ。慶應義塾大学卒業後、テレビ局勤務を経て、2006年に東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などに在籍。2017年国内のFinTechベンチャーへ移り、経済系Webメディアの編集長として月間PVを就任1年で当初の7倍超に伸ばす。2020年に東洋経済へ復帰、「会社四季報オンライン」編集長に就任。

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