松屋はなぜ"プレミアム牛丼"で勝負するのか キーワードは「米国産牛肉の輸入規制緩和」
とはいえ、その一方で「これを導入することで客が減るかもしれない」と言ってみたり、「今までの牛めしより原価率は高い。売上高が前年比105%くらいになると(採算的に)チャラになる」と漏らしてみたり、自信があるのかないのか、業績にどう影響するのか、松屋のビジョンが何とも判然としない。
考え込んでいると、業界歴の長い外食ジャーナリストがヒントを教えてくれた。キーワードは「米国産牛肉の輸入規制緩和」だ。
規制緩和をめぐる業界の誤算
2013年2月、厚生労働省がそれまで「月齢20カ月以下」としていた米国産牛肉の輸入に際しての規制を「月齢30カ月以下」へと改めた。当初は、この大幅緩和によって供給量が増え、牛肉価格は下落すると見られていた。
だが、フタを開けてみると、牛肉価格は一向に下がらなかった。2013年には米国で牛肉の生産量が減り、価格は上昇していたからだ。2012年夏に米国で大規模干ばつが発生したことで、飼料代を抑えたい畜産農家が牛の屠畜量を増やしており、その反動減が出た形だった。
これで当初の目算が狂ったのが、“デフレの象徴”とも呼ばれる苛烈な値下げ競争を繰り広げていた牛丼業界である。「290円でいい商品を作れと言われても限界がある。味の追求はなかなかできない」(緑川社長)。売り上げそのものが上がらないと、商品開発費の捻出もままならなかった。
かといって、中途半端な値上げでは、顧客を失うだけ。そうであれば、価格を上げる分、品質も大幅に改善すればいい。大手2社に比べて後手に回っていた感があった今回の松屋の大幅値上げには、そんな背景があったと推察される。実際、松屋の新商品開発がスタートしたのは、今から約1年前。ちょうど、規制緩和の恩恵が期待薄だと判明した時期に重なる。
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