スルガ銀行、ノジマとの出会いと別れで得た教訓 ノジマ社長は就任から1年足らずで副会長を辞任

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家電量販店大手であるノジマの野島社長(左)は、スルガ銀行の取締役副会長を6月1日付で辞任した(撮影:今井康一、尾形文繁)

「両社はWin-Winとなる協業を一層推進していく」。そう宣言してからわずか1年で、スルガ銀行とノジマの関係は冷え切ってしまった。

提携解消や役員人事の報道が先行する中、スルガ銀行は5月27日、取締役副会長である野島廣司(ノジマ社長)氏が2021年6月29日の株主総会をもって退任すると公表した。

ところが6月1日、ノジマ側は野島社長が同日付でスルガ銀行副会長を辞任したと発表。それから約3時間後、スルガ銀行が野島氏から取締役の辞任届を受け取ったことを公表した。両者の意思疎通がまるで見受けられない結末だった。

両者の接点は2019年5月。不正融資問題からの再建を目指すスルガ銀に対し、ノジマが市場で約5%の株式を買い集め、業務提携に至った。そして、2019年10月にはノジマがスルガ銀の創業家らが保有していた株を買い取り、18.52%を保有する筆頭株主となった。

ノジマは再建の第一歩のはずだった

2018年に公表されたスルガ銀の不正融資に関する第三者委員会の報告書では、不正を招いた要因に創業家の支配があったと指摘。さらに、「新しい人材が新しい風・価値観を持ち込んでくれない限り、自力では変われない」とも断じた。それだけに、創業家の保有する株式をノジマが取得したことで、スルガ銀行が過去のしがらみを絶てたことは大きかった。

そのノジマと新たに手を組み、新しい人材として同社の社長である野島氏を取締役副会長に迎え、再建の第一歩を踏み出したはずだった。2020年に資本業務提携を発表したときは、複数の取り組みを協議すると打ち出していた。が、実現した施策は「相互送客くらい」(関係者)というのが現実だった。

5月6日の決算説明会でスルガ銀行とのシナジーが見えないと質問を受けた野島社長は、「成果が出ていないのはその通り。何か決まったことがあれば、そのつど開示していく」と話していた。結局、経営再建や連携の方針をめぐる考え方が一致しなかったようで、両社は資本業務提携の解消に向けて協議をすることになった。

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