スルガ銀行、ノジマとの出会いと別れで得た教訓 ノジマ社長は就任から1年足らずで副会長を辞任

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ノジマは自社店舗内でスルガ銀の金融サービスを提供する共同店舗の設置や、カードビジネスでの連携を目指していた。さらにノジマ傘下の個人向けインターネット接続事業のニフティや携帯電話販売の大手代理店ITXを活用したオンラインサービスやフィンテック事業も視野に入れていた。そのどれもが実現しないまま、両社の提携は終わろうとしている。

袂を分かったスルガ銀の先行きは決して甘くない。2020年度は純利益で214億円(前年比15%減)の黒字だったが、これは過去に積み上げた利回りの高い融資の恩恵があるからだ。

融資の新規実行は2019年度の67億円をどん底に、2021年度1200億円、2022年度1900億円と回復させる計画だ。それでも、ピークだった2015年度(個人ローン実行4655億円)から見れば大きく見劣りする。

リスクの低い顧客への融資拡大から利回りも低下している。過去の融資が返済されると貸出残高は減っていき、高利回りの恩恵も薄れていく。また直近では新たな火種も生じている。スルガ銀行のアパート・マンションローンを利用したオーナーの救済を目的に被害弁護団が結成されたからだ。弁護団は債務の減免を求めており、交渉の行方次第でスルガ銀行の与信費用に大きく影響しかねない。

次の「筆頭株主」はどこか

今後の焦点は、ノジマが保有するスルガ銀行の株式(18.52%)だ。野島氏が役員を辞任しただけに、もはや株式保有を続けるインセンティブは低いだろう。

直近でスルガ銀行の時価総額は800億円台。時価で引き取るならば160億円前後で筆頭株主になれる。今後の展開は、業務提携を視野にほかの銀行が買い取る、異業種からノジマの後釜が出てくる、もしくはスルガ銀行自身が買い取るという3つだ。

業績を牽引してきた投資用不動産の融資に頼れない今、実効性のある業務提携が必要だろう。次の一手をどう打つか。ノジマの持つ株式の行方が大きなポイントになる。

藤原 宏成 東洋経済 記者

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ふじわら ひろなる / Hironaru Fujiwara

1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。銀行など金融業界を担当。

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