--新卒採用の状況はいかがでしょうか
新卒の超売り手の採用市場で、ここ数年メーカー人気が落ちていることには強い危機感を持っています。特に文系学生では金融を中心とした非メーカー人気が強く、彼らがイメージしにくいメーカーの事務系の仕事をどう理解してもらうかを常に考えています。
理系学生も、メーカーだけではなく非メーカーからの攻勢もあって優秀層の争奪戦が激しく、気が抜けません。
そこで様々な方法で採用活動の強化策を取っています。リクルーターを増員し、採用プロモーションにも力を入れています。
この状況下でも決して採用者の質を低下させることはしません。逆に上げていこうとしています。先に述べましたように、中期経営計画にあるような大きな飛躍を今後続けていくためには、人材の質を高めることは不可欠だからです。特に、グローバル型事業の拡大のためには、これまでの延長線上にはない採用成果を上げて行きたいと考えています。
そこで、2009年度採用から開始した新卒採用のキャッチフレーズを
「世界につながる仕事をしよう」
としました。私たちのビジネス自体が世界につながっていること、今後グローバル展開を加速すること、そして世界に通用する人材になれることを訴求しています。
--新卒採用の募集はどのように行っていますか
自社の採用ホームページ、各種就職ナビの掲載、学内セミナー、就職イベントなど、様々な機会を通じてアピールしています。応募経路としては就職ナビ経由のものが圧倒的に多いですね。
プレエントリーされた方すべてを自社の採用管理データベースに入れ、その後採用上の情報を配信したり、連絡を取ったりしていきますので、どの経路から応募いただいてもかまいません。
--新卒採用の選考方法はどのようなものですか
正式応募としてエントリーシートをWebからダウンロードしていただき、記入したものを郵送してもらいます。いつでも受付けることが原則なので締切は毎月10日、25日ですが、採用の系ごとに選考時期のピークが異なりますので、その情報はホームページなどで伝達します。
エントリーシートには自己PRシートという自由記入の白紙ページがあり、自己紹介、志望動機などを書いてもらいます。型にはまらない自由な発想を見てみたいという趣旨からです。
書類審査後、通過者には面接の連絡をします。面接はグループ一括で進め(旭化成ホームズだけは別途)、最後に本人の希望を聞き、受験する事業会社を決定してもらいます。決められない学生には複数の希望を聞きます。「どの事業会社かきめられないが、旭化成に入りたい!」という人も歓迎です。職種別採用はMRとLSI関係で行っており、他の人は正式内定までに配属会社が決まり、入社後に配属部署が決まるようになっています。
--新卒の面接ではどのようなことを質問しますか
志望動機などよりも「学生時代に何をやってきたのか」を中心に聞きます。どのようなことでも良い、主体的に何かに取り組み、どのような努力をしてきたかを聞きます。重視するのは成果自体ではなくプロセスなのです。それを通じて、物事に取り組む姿勢、実行力を見ていきます。
能力が高そうでも合わないと感じる人は、独善的な人ですね。旭化成はワンマンプレーではなくチームワークを重視します。協調性の中で自分の力をどう発揮できるかがポイントです。いろんなものをすり合わせながら物事を進められる人が求められます。
また、挑戦心と誠実さをともに持てる人がほしいですね。旭化成はこれまで様々な多角化を成功させてきており、挑戦する心は組織としてのDNAともいえます。また、誠実に仕事をする姿勢も伝統的なものです。一緒に働く仲間としてこのような資質が重要視されます。
ただ、いろんな事業会社、いろんな職種がありますので、当然いろんなタイプの人材が必要です。まずはぶつかってきてほしいと思います。
--旭化成はインターンシップをいち早く取り入れたことで有名ですね
学生に就職意識を高めてもらうために97年から実施しています。今年は、事務系、研究開発、生産技術、MR、高専生に対してそれぞれ特徴のあるプログラムを実施しています。採用選考と関係はないのですが、最終的に入社する率は体験者の2~3割と低くない数字です。特に研究開発職はもともと志向が明確なので3~5割ほどが入社に至っています。
--全体の離職率はいかがですか
前回調査時、連結従業員数が23,030人のときに離職者数は362人(2006年8月時点調査データ)ですから、1.57%と低い数字だと思います。
男性、女性の平均勤続年数もそれぞれ19年、18.3年と大きな差はありません。育児休暇制度なども充実させています。厚生労働省が、次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づき、一定の要件を満たした企業を認定しました(愛称「くるみん」)が、当社も認定を受けました。男女ともに働きやすい環境作りに努力してきた結果だと思っています。
有給休暇の取得率も84%と高めの数字です(全国平均では50%以下)。もちろん100%取得が目標ではありますが。
--最後に今後の採用の全体像はどのようになっていきますか
厳しい採用環境下でもより優秀な人を採るために採用手法を進化させることが必要です。そのためには、常に新しいことにチャレンジする姿勢が必要です。旭化成には挑戦するDNAがあり、採用活動でもそれは同じです。そうして、旭化成らしい採用の形、個性を作り上げて行きたいと思います。だから、採用スタッフにはいつも「新しいことを考えろ」とハッパをかけています。
【このひとにお話をおうかがいしました】 日比 彰(ひび あきら) 旭化成株式会社 人財・労務部 採用グループ長 1990年神戸大学教育学部卒。 同年旭化成入社、住宅事業部営業、企画室等を経て、2003年より現部署。 採用担当になった時の感想は、 「外から見るのと大違い。来る学生を面接すればいい仕事だと思っていましたが、いざやると、学生に会社のこと、仕事のことを 理解してもらい、魅力を伝えることがこんなに大変なことなのかと驚きました」 今は、会社の将来を担う人材を採る仕事は、ある意味会社の未来を変えることなのだと、強い責任とやりがいを感じると言う。
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