「ロッキー」大失速でも「ライズ」が絶好調の訳 前年割れ/前年超えと明暗分けた2社の違い

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2020年1~12月のトヨタ(レクサスを含む)の登録車の販売台数は、約147万台。国内全体では約288万台だった。

つまり、トヨタのシェアは国内新車市場の約51%。日本で販売される登録車の過半数が、トヨタとなったのだ。さすがのトヨタでも、シェア50%を超えるのは今回が初。その快挙には、全車種併売化も大きく貢献しているだろう。

もともと強力な販売力を持つトヨタ。そのトヨタがコロナ禍の中でも、しっかりと新型車のリリースを続け、しかも全車種併売化という大ナタまで振るった。そうした結果、兄弟車ではあるものの、ライズとロッキーの2車の販売台数は大きな差がつく結果となった。

OEMでも売れれば嬉しい

では、ロッキーが失速したダイハツは、ライズの好調をどう見ているのだろうか。実は、ダイハツはそんな状況にあっても、それほど困ってはいない。販売力の差は、最初からわかっていたことである。それよりも、ライズとルーミーという2モデルのヒットのほうが嬉しいはずだ。

そう、ルーミーとタンクも、ライズと同様にダイハツが開発・生産するOEMモデルなのだ。ダイハツディーラーで販売しなくても、メーカーとしてのメリットは大きいのである。トヨタ「パッソ」も同様に、ダイハツ「ブーン」のOEMだ。

また、ロッキーは日本だけでなく、マレーシアとインドネシアでの発売が、2021年になってスタートした。

フロントなどのデザインが異なるインドネシア向け「ロッキー」(写真:ダイハツ)

マレーシアでは「Ativa(アティバ)」、インドネシアは「ロッキー」の名前で現地生産を行う。

日本での販売が減速したのはマイナス要因だが、それを上回るプラスのニュースが2つもあるのだ。

そんなダイハツで今、不安なのは、部品供給不足だ。なんと6月14日に滋賀にある竜王第2工場を稼働休止すると発表した。同じくトヨタも6月に生産調整を行うと発表している。

どちらも、いわゆる世界的な半導体不足の影響だ。ダイハツ車にいくら人気があろうとも、生産できなければ販売することはできない。せっかくのダイハツの快進撃を阻害しそうなのは、販売力ではなく半導体不足という新たな問題ではないだろうか。

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鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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