「ロッキー」大失速でも「ライズ」が絶好調の訳 前年割れ/前年超えと明暗分けた2社の違い

拡大
縮小

こうした複数の販売チャンネルで、それぞれに異なる顧客層を抱えるようにして、トヨタの販売店同士の競争激化を防いでいたのだ。しかし、将来的な国内市場の縮小化を見据え、トヨタは国内販売モデルの削減、そして全販売店での全車種併売化を計画。昨年2020年5月に全車種併売化をスタートさせた。

これにより、トヨタ車同士の競争が激化した。それも当然のことだろう。昨年に発売された新型車のヤリス、ヤリスクロス、ハリアーは、どの販売店でも大人気。

従来の体制であれば、ヤリスとヤリスクロスはネッツ店、ハリアーはトヨペット店の専売となったであろう。しかし、全販売店での全車種併売化となれば、ほかの販売店でも売ることができる。それがヤリスとハリアーのヒットの要因の1つになったといえる。

アル/ヴェルに見る販売激化の影響

また、「ルーミー」と「アルファード」という、すでに発売から数年が経った旧型モデルが2020年1~12月の販売ランキングで上位(ルーミーが6位、アルファードが5位)に食い込んだのも、全車種併売化の影響だろう。

「ルーミー」はトヨタ店とカローラ店の専売モデルで、その兄弟車である「タンク」がトヨペット店とネッツ店で売られていた。それが全車種併売化により、タンクが販売終了になった。つまり、消えたタンクの分がルーミーに上乗せされているのだ。

2020年9月のマイナーチェンジを機に「タンク」は販売終了となり「ルーミー」に一本化された(写真:トヨタ自動車)

また、アルファードも「ヴェルファイア」という兄弟車が違う販売店用に用意されていたが、「次期型のヴェルファイアはなくなる」という噂によって人気がアルファードに集中している。

まだヴェルファイアを買うことはできるが、「どちらも選べるのであれば、次期型も存続して、将来の下取りで有利なアルファードを」と考えるユーザーが多かったのだろう。全車種併売前は、販売台数にそこまで大きな差はなかったが、直近4月の数値では、ヴェルファイアはアルファードのわずか10分の1にまで台数を減らしている。

このように、トヨタの販売店同士で、仁義なき戦いが繰り広げられたことが予想される。そして、その結果は数字にも見ることができる。それがトヨタとして過去最高を記録した2020年の国内シェアだ。

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