「ロッキー」大失速でも「ライズ」が絶好調の訳 前年割れ/前年超えと明暗分けた2社の違い

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確実なのは、“商品が悪いわけではない”ということ。なんといっても兄弟車なのだ。価格や仕様だってほぼ同じだ。

そうとなれば、理由は1つ。トヨタとダイハツの“販売力”の違いにある。自販連が発表している、軽自動車を除く登録車のメーカー別販売台数の月ごとの成績を見れば、その差は歴然だ。

販売する台数が30倍以上だけでなく、前年比でもダイハツはトヨタに大きく差をつけられている。ちなみにトヨタだけでなく、三菱自動車、スズキも1~4月すべてが前年比プラス。

一方、日産、マツダ、スバルはマイナスからプラスへと上向き。ホンダはマイナスのままという状況だ。トヨタと三菱自動車、スズキが前年比プラスで推移しているのに対して、ホンダとダイハツは前年割れが続いているのである。

トヨタとダイハツの販売力の差をもう少し、詳しく見ていこう。まずは、ディーラー網の差だ。トヨタが擁する販売店は全国で約5000店。一方、ダイハツは約800店にすぎない。店舗数に、6倍以上の差があるのだ。

しかも、ダイハツの主力は軽自動車であり、ロッキーのような登録車はランナップが少ない。売る商品が少ないのだから、当然、それも販売力の差になる。

新車が続くトヨタ、新車ゼロのダイハツ

しかし、それだけではない。トヨタは新車攻勢が続いている。2020年に「ヤリス」「RAV4 PHV」「ハリアー」「ヤリスクロス」「ミライ」「C+pod」と、超小型EV(電気自動車)からFCV(燃料電池自動車)まで、幅広い新型車を発売している。

「ヤリスクロス」は今もっとも勢いのあるコンパクトSUVの1つ(写真:トヨタ自動車)

一方のダイハツは、2020年の新型車はゼロだった。この差は大きい。

発売されたばかりのヤリスクロスを見にトヨタディーラーを訪れ、「やっぱりライズにしよう」という顧客も多いはずだ。新車攻勢をキープすることで、販売店へ顧客を継続的に呼び寄せる。それも販売力の1つといえる。

そんなトヨタの販売力をさらに高める変革が、昨年から実施されている。それが「全販売店での全車種併売化」だ。

もともとトヨタは、「トヨタ店」「トヨペット店」「カローラ店」「ネッツ店」という4チャネルの販売店を有しており、それぞれに販売する車種を決めていた。「クラウン」を買うならトヨタ店、ハリアーが欲しければトヨペット店、カローラならカローラ店、そして「ヴィッツ(現在のヤリス)」ならネッツ店という具合だ。

次ページ「全車種併売化」でトヨタ同士の競争が激化
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