スルガ銀行、「かぼちゃ」の次は「アパマン」の試練 シェアハウス融資の“徳政令"を経て次なる難題
数十回もの交渉を経て2020年3月、スルガ銀とシェアハウスのオーナー257人との間で和解が成立した。オーナーがシェアハウスを手放すのと引き換えに、スルガ銀は債務を帳消しにするという内容だ。2021年3月には追加でオーナー285人が同様の和解に至った。これが「第1幕」だ。
こうしてシェアハウス問題の解決に一定の道筋がついたことから、今回新たにアパマンローンを対象とする弁護団が設立された。
スルガ銀行員が「チャレンジしましょう」
アパマンローンも基本的な構図はシェアハウス向け融資と同じで、レントロールの偽造や融資書類の改ざんが行われていた。ただ、不正に対するスルガ銀の関与度合いは少々事情が異なる。
シェアハウス向け融資の場合は不動産業者が不正を主導し、スルガ銀は持ち込まれた案件に対して融資を実行していたとされる。一方、アパマンローンでは、スルガ銀自ら投資用アパートやマンションの購入を促すセミナーを主催し、その場で販売会社もスルガ銀が手配していたという。
埼玉県内に住む40代男性は2015年春、スルガ銀から融資を受けて茨城県と北海道の中古アパートを1棟づつ購入した。きっかけは、スルガ銀が2014年末に開いた資産運用セミナーだ。「チャレンジしましょう」――。男性はスルガ銀の行員から不動産投資へ背中を押され、販売会社もスルガ銀から紹介されたと振り返る。2棟で計1億1770万円の購入代金のほとんどは、スルガ銀によるアパマンローンで賄った。
購入の翌年、男性が別の不動産業者に売却査定を依頼したところ、提示された売却価格は最大でも2棟で7460万円だった。不正を疑った男性がスルガ銀に対して融資申請書類を請求すると、スルガ銀が開示した口座資料では、銀行口座の残高が本来の額から3000万円以上水増しされて記載されていたという。
男性のような1棟物件のオーナーを対象に、弁護団はアパマンローンの債務減免などを求めている。スルガ銀の広報担当者は弁護団との交渉方針について「回答を控える」としたが、交渉はシェアハウス向け融資以上の難航が予想される。
アパマンローンの債権額はシェアハウス向け融資の比ではない。スルガ銀が2019年5月に公表した投資等不動産ローンに関する報告書によれば、融資書類の改ざんや偽造といった不正が認められた、もしくは不正の疑いがあるアパマンローン案件の債権額は約5200億円。シェアハウス向け融資の4倍以上ある。
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