日産ゴーン事件「最後の証人」が示した重大見解 東大教授は法廷で「虚偽記載ではない」と述べた
田中教授が出廷する2日前、証券取引等監視委員会の谷口義幸・開示検査課長が証言台に立った。かつて役員報酬の個別開示を企画立案した官僚であり、日産の有報を虚偽記載だと判断した責任者だ。2012年から2015年には東北大学で教鞭を取った経験もある。
谷口氏の説明はこうだった。「(日産の有報に記載された)『支払われた報酬』というのは、前置きのような文章だと一般投資家は理解する。前後の文脈から、そして総合的に見れば、内閣府令で求められている報酬(受け取るもしくは、受け取る見込みの報酬)が記載されていることは明らかだから、一般投資家は未払い報酬を含むと読む」。一般投資家が内閣府令を“熟知”しているという前提である。
だが、虚偽記載か不記載かは「個々にいろいろ勘案して決めている」。ゴーン氏の役員報酬を虚偽記載だと判断した理由や個別具体的な事情については「お話をしないことになっている」と、明確な根拠を示さなかった。
「田中証言は到底無視できない」
当局とは正反対の田中見解を、本裁判を担当している下津健司裁判長はどう受け止めたのだろうか。

株式会社商事法務の発刊する『会社法コンメンタール』。ビジネスに関する判例や法解釈をまとめた全22巻の大著だが、その第8巻「機関(2)」(2009年2月発行)の「第361条(取締役の報酬等)」「第379条(会計参与の報酬等)」「第379条(監査役の報酬等)」の計498ページ(索引除く)のうち、85ページを執筆したのが当時35歳だった田中教授だった。
会社関係の法務に詳しいある弁護士は、「(田中教授は)商法学者の中でもホープ中のホープ」とし、「下津裁判長はもちろんのこと、法務省のお偉方は田中証言を到底無視できない」と指摘する。
田中教授はケリー裁判の最後の証人だった。本裁判は被告人のケリー氏本人への尋問が始まっている。5月27日までで計6日間の主尋問が行われ、5月28日から計6日間の検察側尋問が始まる。
ケリー氏はゴーン氏との共謀を否定しており、司法取引をした大沼敏明・元秘書室長の証言についても「ケリー氏に指示されて未払い報酬の仕組みを考えた」などの主要部分をことごとく否定している。結審は7月7日の予定。はたして田中見解は判決にどう影響するのか。ゴーン事件の結末を最後まで見届ける必要があるだろう。
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