水素に社運を懸ける、岩谷産業のFCV戦略 国内初の商用水素ステーションを開設
岩谷産業では、今年度内に10月の北九州市小倉区をはじめ、埼玉県戸田市、愛知県刈谷市などで計10カ所の商用ステーション建設を目指す。来年度には東京都港区にもオープンさせる予定だ。
当然ながら、採算的には当面厳しい。ステーション建設に補助金が1カ所につき最大2.8億円出たとしても、ランニングコストもあり、数年は黒字化を見込みにくい。補助金なしで黒字化するのは、FCVの普及が200万台に達すると予想される2025年以降となりそうだ。
だが、岩谷産業にとって重要なのは、水素ステーションの運営よりも、FCVの燃料である水素の販売を増やすことだ。同社関係者は「異業種から企業がどんどん水素ステーション運営に参入することで、われわれが製造・販売する水素の需要が高まればそれでいい」と話す。
液化水素でシェアほぼ独占
同社は水素ビジネスを将来的な事業の柱に据えており、燃料電池車向け水素でも調達・精製から輸送・供給・貯蔵まで主導的役割を狙っている。
現在でも産業用水素のトップサプライヤー(シェア約55%、同社推計)の地位にある。圧縮水素も手掛けるが、とりわけ液化水素の生産では国内でほぼ100%のシェアを持つ。
1970年代から宇宙航空研究開発機構(JAXA)のロケット向けに液化水素を供給しており、2006年からは民間向けへ進出した。大阪府堺市、千葉県市原市、山口県周南市に液化工場を有する。2016年度以降に関東で第4工場を建設する計画もある。
現在の水素の供給先は半導体・液晶、自動車ガラス向けなどが中心だ。FCV向けでは、実証研究の水素ステーションを累計9カ所(現存は5カ所)で単独・共同で運営してきており、今回初めて商用のステーションをオープンした。
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