水素に社運を懸ける、岩谷産業のFCV戦略 国内初の商用水素ステーションを開設
「今は水素がエネルギーに変わる準備段階。将来の爆発的な需要拡大に備えて先行的に投資している」と、同社の上田恭久・水素ガス部長は話す。水素ステーションの運営では、リンデ社など海外パートナーとも組んで機器輸入によるコスト削減や設備開発を進める。将来的には他社への設備供給や建設一括請負も視野に入れる。
カギは水素液化コストの抑制
岩谷産業にとって最大の課題は、液化水素のハンドリング技術における独占的優位性を生かせるかどうかだ。
圧縮水素に比べ、液化水素は高純度で大量輸送、大量貯蔵に適している(圧縮水素の約10倍の量を輸送可能)。その点は、FCVが普及した時に強みとなる。あとは、液化にかかるエネルギーコストをいかに抑制するかである。
現在、液化工場では旭硝子やトクヤマから副生水素を調達したり、天然ガスを分解したりして精製・液化を行っている。だが、コストを圧縮できるなら「水素の原料は何でもいい」(上田氏)。将来的には、海外から輸入される低コスト水素の利用を有力な選択肢に置く。
すでに、豪州産褐炭からの液化水素生産、日本向け輸出をもくろむ川崎重工業と技術交流を行っており、将来的に日本におけるローリー輸送やステーション運営などのハンドリングで役割を果たしたい考え。同様に、海外からの水素輸入計画に取り組む千代田化工建設との連携も十分想定される。
FCV向け水素の供給では、製油所に水素製造装置を有し、ガソリンスタンドという将来転用可能な全国的販売ネットワークを有する石油元売り各社が有力なライバルとなる。最大手のJXは2015年度までに商用水素ステーションを40カ所整備する目標を変えていない。
また、東京ガスや大阪ガスなど都市ガス会社も水素ビジネスに力を入れている。水素の原料となるガスを既存のパイプライン網でステーションへ運び、そこに水素製造装置を置いてFCVへ供給するというオンサイト方式で市場開拓を狙っている。
こうしたライバルと対抗しながら、得意の液化水素ビジネスをどう伸ばしていけるかが、岩谷産業の将来の成長を大きく左右しそうだ。
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