秘策はノート「嫌な事から逃げない子」育てるコツ 大人の価値観押しつけず、成功体験を積ませる

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最近よく、指導者や保護者の方からトゲのある言葉を投げかけられるという話を聞きます。 大人自身もイライラして、子どもの悪いところばかりを指摘してしまったり、言葉のチョイスが荒くなってしまったりすることがあると思います。

一時的なものであれば問題ないと思いますが、つねに自分の価値観ばかり押しつけて、子どもの考え方を否定し続けると、後々自信や人との信頼関係にも影響を及ぼすことがあります。

相談に来てくれた中学生のヒロアキくん(仮名)。彼の口癖が「僕は何をしてもうまくいかない」でした。小学生のころ、お母さんから怒られてばかりで、何をしても「ダメな子」と言われ続けてきたと話してくれました。お母さんは息子に期待を膨らますあまり、つねに厳しい言葉をかけ続けてきたといいます。

バスケットポールをしているヒロアキくんは、次第に自信を失いプレーも消極的になっていきました。また自信の無さから、他人とのコミュニケーションも少なくなり、 チームメイトとのミーティングも引っ込み思案で、自分から意見することもなかったようです。

それもそのはず。ヒロアキくんのお母さんは息子にだけではなく、「あの子はここがダメなのよ」と、ほかの子に対しても厳しい言葉ばかりを発していたからです。自然と友達の良くないところが目につくようになり、友達に対しても信頼感を持てなくなっていきました。

良くないところに目がいってしまう

ヒロアキくんの考え方の癖は、そのとき良いところがあったとしても、よくなかったところばかりに目がいってしまうことです。普段のお母さんとの会話で、修正点の話ばかりするため、良かったところを認めることができなくなっていました。

自信は「良かった」「できた」というプラスの感情を味わうことで育まれていきます。親から褒められて、評価され、「よしっ!」と思うことも自信を育てる大きな要因となります。否定的な意見が先行してしまうときは、一度立ち止まって試してもらいたいことがあります。それは、意図的に子どもの考え方を聞く時間を作ることです。

ヒロアキくんのお母さんには、ヒロアキくんの感覚で「できていた」と感じることを言葉で引き出し、共感してほしいと伝えました。

「自分の感覚で良かったものは、認めていいんだ!」 と、自分が良かったという思いを他人にも認めてもらえると、自信につながっていきます。自信が育つと自分の考えも伝えやすくなり、他人の意見も聞き入れられるようになるでしょう。

ヒロアキくんのお母さんには、「今日はどうだった」 から、会話を始めてもらうことをオススメしました。「出てきた答えに共感してから、アドバイスしてください」とも伝え、子どもの気持ちを優先して話をするように、コミュニケーションを変えてもらいました。

近くにいる大人が子どもの考えをリスペクトし、他人もリスペクトする。そんなコミュニケーションの姿勢を見せることが、 自信を育て、人と良い関係性を保つことにつながります。 主体性と社交性を持てる子になるためには、周囲の大人とのコミュニケーションが大切なのだと感じています。

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