秘策はノート「嫌な事から逃げない子」育てるコツ 大人の価値観押しつけず、成功体験を積ませる

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自己肯定感を育むための方法として、1つ提案したいのは、ライバルを作ることです。

私がサポートしている中学3年生のタカアキくん(仮名)、夢はサッカー選手になることです。でも、現状は自信が持てず、試合で実力を出せていません。次第に仲間とのコミュニケーションも取れなくなっていました。 練習すればするほど自分のイメージする姿とは程遠いことを実感し、自信を失っていくばかりだったのです。

彼はとうとう一生懸命やることすらばかばかしく感じてしまい、サッカーを本気でできなくなってしまいました。

「ライバルに勝つことを目標にしていた」

友人のプロスポーツ選手が話していた言葉を思い出した私は、彼にもライバル作りを提案しました。自分の理想という大きな目標だけを意識すると、自信を失ってしまうことは少なくありません。特に向上心が高い性格な人ほど、そんな状況に陥りやすいと感じます。 そんなとき、大きな目標への架け橋になってくれるのが「ライバルの存在」です。

小さな勝利を積み重ねることで自己肯定感が高まる

負けたくないと思えるライバルがいると、2人だけの小さな勝ち負けをたくさん味わうことができるからです。 小さな勝利を積み重ねることで「よし!」という感情を味わう機会が増えて、自己肯定感が高まっていき、自信が生まれてくるのです。

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つねに意識できる存在でいられるように、ライバルは身近(同じチーム)にいる人をオススメします。さらに、自分と境遇やレベルが近いと、なおいいでしょう。

「ライバルを作り、勝利ポイントを貯めていこう」

タカアキくんにそう伝えると、1カ月もしたら、いきいきとした表情でプレーしていました。ライバルを意識することによって、手の届く位置に目標設定がしやすくなったようです。「サッカーが楽しくなってきた」と、タカアキくん。サッカーに対する感情も変化していました。

ライバルを作ると競争心があおられるなどの効果もありますが、いちばんの効果は勝てるという成功体験を味わえることです。ゲームをやるときに、簡単なレベルからクリアしていく感覚に似ていますね。少しずつクリアを重ねていくうちに、できることが増え、自信を得て、楽しくなっていく感覚です。そうなれば、自然と夢中になっていくでしょう。

スポーツでも同じ心理状態だと思います。身近なライバルを意識することにより、一つひとつのプレーの質も向上します。ライバルより上回る、小さな勝利の積み重ねが、大きな自信へとつながっていくのです。

清水 利生 メンタルトレーナー

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しみず としき / Toshiki Shimizu

43Lab代表取締役。1985年山梨県生まれ。山梨県立韮崎高校卒業。山梨学院大学を中退しプロフットサル選手として29歳までプレー。引退後メンタルトレーナーに転身。現在プロスポーツチームのサポートをはじめ、オリンピック選手やワールドカップ出場選手など日本を代表する選手たちのサポートを行う。ジュニア育成「パンケーキプロジェクト」では、年間延べ 2000人を超える子どもたちをサポートし自己肯定感を育てる活動を広げる。

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