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話の印象が薄い人と爪痕を残せる人の決定的な差 凡庸な決まり文句は誰の心にもまったく残らない

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  • 能勢 邦子 『anan』元編集長、『Hanako』『POPYE』元副編集長
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話が逸れますが、マガジンハウスの『Olive』(現在は休刊)や『anan』の全盛期(80〜90年代)をつくった淀川美代子さんという名編集長がいます。私も、淀川さんの『anan』に4年ほど在籍していました。

そのころの『anan』のなにがすごいかというと、すべてが「かわいい」か「かわいくない」かで決まることです。写真も文も「なんか、かわいくない」とボツになります。芸能人も服も雑貨も「かわいい」だけを集めます。

聞くところによると、淀川さんは、マガジンハウスに入社する時にすでに「私はかわいい文章を書きたい」と言ったのだとか。淀川さんの言うところの「かわいい」を感覚的に理解し実践できるまで、1年はかかったと思います。

『anan』に関わるスタッフが全員「かわいい」「かわいくない」を正しく判断してページをつくります。「かわいい」を実践すると『anan』ができる。それぐらい明確な「かわいい」がありました。

残念ながら、いまの時代、そこまで共通の価値観を持てる言葉はありません。だからこそ言葉の吟味を重ねて「伝えたいこと」にいちばん近い「かわいい」を表す言葉をつくるのです。

雑な表現を改め「言葉の解像度」を上げる

動詞もそうです。「歩く」「食べる」「痩せる」「遊ぶ」といった普通すぎる動詞は目に留まりません。「歩く」を「うろつく」「ほっつく」のように、ほかの言葉に言い換えます。「そぞろ歩く」「練り歩く」と複合動詞にするのも覚えておきたい方法です。名詞でも「ダイエット」という普通の名詞を目に留まる新鮮な言葉に言い換えます。「ボディメイク」「痩せる技」……。言葉の足し算もできますね。「ダイエット術」「超ダイエット」……。

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「吟味する」というのは、念入りに調べるという意味ですが、詩歌を吟じてその趣を味わうという意味でも使われます。言葉の吟味は、まさに、この意味。

言葉を因数分解して広げ、比べて味わい、ニュアンスも含め「伝えたいこと」に近いものを探していきます。

言葉を吟味したうえで、「かわいい」「歩く」「ダイエット」と普通すぎる言葉を、やっぱり使うというのはもちろんアリです。その場合は、そのほかの言葉との組み合わせで工夫をしましょう。

言葉の吟味を繰り返すことは凡庸な常套句を遠ざけ、より解像度の高い表現を身につけるうえで大いに役立ちます。

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