日経平均株価が「ほぼ底値をつけた」と言えるワケ 「インフレ懸念念仏」ははたして正しいのか

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しかし世間では、アメリカでのインフレに伴う長期金利上昇懸念を「今後の株価下落の大きな要因になる」と唱える向きも多いようだ。そうした懸念は、本当に正しいのだろうか。

確かに場況解説などを見ると「今日は物価指数が上昇したので、インフレ懸念でアメリカの株価が下がり、日本株もツレ安した」「今日は長期金利が低下したので、アメリカ株は持ち直した」などといった、インフレや金利で株式市況を解説しよう、という記事があふれかえっている。通常の投資家が「インフレや金利こそが問題なのだ、そうした懸念が解消されなければ株価は上がらない」と信じても、仕方がないだろう。

買われすぎていたから売られただけ

このような「インフレ懸念念仏」がアメリカ市場で最高潮に達したのは、5月12日に4月分の消費者物価(CPI)が発表されたときだった。

この4月のCPIは前年比で4.2%上昇と、3月の2.6%から一気に伸びを高めた。そのため、アメリカの10年国債利回りもその前日まで1.60~1.62%程度で推移していたものが、CPIを受けて一時1.70%近辺に上振れした。こうしたインフレと金利の動向により、ニューヨークダウは前日比で1.99%、ナスダック総合指数は同じく2.67%下落した。

ところがそのすぐ翌日の13日には、4月の生産者物価指数(PPI、日本の報道では「卸売物価指数」との表記も)が公表された。こちらも前年比で6.2%もの上昇と、3月の4.2%をはるかに上回り、2010年に統計が改定されて以来の最高値を記録した。

では、このPPIの急伸でどれほどアメリカの株価指数が下落したかといえば、下落どころか、NYダウは前日比で1.29%上昇、ナスダック総合指数は0.72%上昇した。つまり「インフレ懸念が同国の株価下落の最大の要因だ」という主張はかなり怪しいといえる。

それでは、なぜ日米等の株価は最近下落したのだろうか。それは、過度の楽観により株式が買われすぎたので、その「化けの皮」がはがれただけだろう。

主に今年2~3月まで「買いだ、買いだ~」と浮かれていた向きに対して「インフレとか金利上昇とか、さまざまな懸念要因を、まったく無視して浮かれていますが、本当に大丈夫ですか?」という、至極当然の「反省」を迫られたわけだ。すると今度は「売りだ、売りだ~」と騒いだだけにすぎないと考えている。

この「買われすぎが剥落した」との解釈は、さまざまな株価を相対比較すると鮮明に浮かび上がる。このところの市場では、1)アメリカ株に比べて日本株が不振、2)アメリカ市場ではNYダウやS&P500に比べてナスダック総合指数が不振、3)日本市場ではTOPIXに比べて日経平均が不振、という事態が目につくことが多くなっている。

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