実は、世界の多くの研究者が飲食店への規制について疑念を抱いている。2月26日、オランダの研究者は、欧州での政府の介入が感染拡大をどれほど防いだか検証した論文を『BMC公衆衛生』誌に発表したが、「イベント禁止と学校閉鎖は有効だが、飲食店の閉鎖の効果は限定的」と結論している。
また、3月30日、『ネイチャー』誌は「なぜ、屋内空間はいまだにコロナのホットスポットになるのだろう」という論文を掲載しているが、広く屋内でのコロナ対策を論じており、飲食店だけを特別視していない。
昨年の第1波で多くのクラスターが発生した飲食店は、利用者も減少し、またソーシャル・ディスタンスや換気など、コロナ対策も強化している。第1波を対象としたスタンフォード大学の解析結果を、現状にあてはめるのは慎重でなければならない。
ところが、政府や専門家は「飲食店悪玉説」に固執する。例えば、尾身氏は「家族内での感染が増えていることは大きな問題だが、歓楽街や飲食を介しての感染拡大が原因であって、家族内や院内の感染はその結果として起こっている(昨年12月23日コロナ感染症対策分科会)」と主張し、その後の緊急事態宣言でも飲食店を中心とした規制を支持した。尾身氏たちの主張は、検証されていない仮説に過ぎないのだが、日本の国策となってしまった。
クラスターの大多数はむしろ医療・介護施設
政府が非科学的な政策を強行すれば、割を食うのは国民だ。飲食店経営者や従業員が被った苦痛は改めて言うまでもないだろう。被害者は、これだけではない。介護施設入所者や患者たちだ。政府・専門家は飲食店への規制強化を求める一方、病院や介護施設には十分な検査を提供せず、感染の蔓延を許した。
第3波のピークであった今年1月、961件のクラスターのうち、604件(63%)が医療・介護施設で発生していたし、第4波で感染拡大が深刻な関西では、神戸市内の老健施設で133人が感染し、25人が死亡するクラスター、宝塚市内の介護施設で53人が感染し、7人が死亡するクラスターが発生している。
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