瀬戸際のみずほフィナンシャルグループが増資、背負った荷物と外したくびき

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 塚本隆史社長(右下写真)は「追加増資は考えていない」とし、発行可能枠241億株を広げる議案は株主総会に付議しないとしている。

 ここまで無理してもなお、新規制への対応は不十分だ。現状、邦銀は自己資本のうち普通株と内部留保の合計がリスク資産に対し2%あればよいが、新規制では、繰延税金資産などのバーチャルな資産を控除した上で、最低でも4%が要求されるとみられる。

ハードルは高い。8000億円の増資を実現し、今11年3月期に、高いハードルと言える公表計画の純利益4300億円を稼いだとしても4%ギリギリだ。世界経済が二番底リスクを抱える中では、余裕がなく、翌年度以降も更なる確実な増益が必要だ。

増資に合わせて、塚本社長は「みずほの変革プログラム」として、
(1)収益力強化プログラム「競争優位の確立」
(2)財務力強化プログラム「資本の充実と資産効率の改善」
(3)現場力強化プログラム「合理化・効率化の推進による現場力強化」
の3本を柱に、12年度の連結業務純益9000億円(09年度7026億円)、連結当期利益5000億円を掲げる。

そもそも10年3月期の純益は、156兆円もの総資産を動かしながら、2394億円の純利益しか出せなかった。そのことが問題だ。

みずほをメインとする個人の口座数が600万、上場企業の7割と取引がある顧客基盤を生かせていない。経費は高く利ザヤは薄い。10年3月期の三井住友フィナンシャルグループの純利益は123兆円の総資産に対して、2715億円だった。

こうした稼げない構造を放置してきたのが、3人の会長だ。塚本社長は「黒字化定着の見極めをつけた」ということを退任の理由としているが、増資と引き換えに、金融庁に退任を迫られたのが実態だ。

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