路線バス、コロナ以上に深刻「人手不足」の処方箋 「みちのり」CEOが語る、苦境を乗り越える戦略
――自動運転技術の進化も楽しみですが、みちのりグループは、この分野でどのような取り組みを行っていますか。
自動運転は、究極の生産性向上策ということができますが、おそらくは、私が現役のうちには都市の街路を運転手のいない自動車が走り回るというようなところまではたどり着かないと思います。
近い将来に実用化されうる自動運転のアプローチには2つあり、1つは山間地などの人口密度の低い地域での運用を想定した、ラストワンマイルの移動手段を確保するための自動運転モビリティです。これはゴルフ場のカートのような車両が、路面に埋設した磁気マーカーに誘導されながら走行する仕組みであり、自律的にAIが運転するのではないので技術的難易度は低く、法令の整備が進み、かつ自治体の支援が得られれば、ここ2~3年のうちに実現するものと考えます。
もう1つは、BRT(Bus Rapid Transit=専用道や専用レーンを用い、速達性・定時性確保を可能にするバス交通システム)の自動運転化です。茨城交通は、旧日立電鉄(2005年に鉄道廃止)の廃線跡の一部を専用道化した「ひたちBRT」という路線を持っています。われわれはここで、2018年度(2週間、小型バス使用)と2020年度(4カ月間、中型バス使用)の2度にわたり、自動運転バスの実証実験を行いました。
この自動運転バスは、自車の走行位置の検出・補正は高性能GPSおよびGPSの感度が悪い一部の場所では磁気マーカーで行い、また、障害物の検知は車載カメラや各種センサー類で行うもので、今はまだ運転席に運転手は座っているものの、ほぼ自律的な自動運転を実現しています。
ただし、ひたちBRTは約10kmの路線中、専用道は約7kmで残りは一般道を走行しています。また、専用道内にも一般道と平面交差する場所が複数ありますので、自動運転技術(車両側)単独では右左折が難しい交差点や、安全確保が難しい地点には、路肩(道路側)に専用センサーを設置して車両と通信することで自動運転を支援する「路車協調」システムを採用しました。このひたちBRTの自動運転に関しては、今後も実証実験を重ね、2023年前半の商用実装を目指しています。
デジタル化、運転手にはあっさり浸透
――こうしたDX対応を進めるに当たって、サービス提供側、ユーザー側双方のデジタルリテラシーが問題になることはありませんか。
会津バスでは、昨年からダイナミック・ルーティングのバスの商用運行を開始していますが、運転手がタブレット操作等をしなければならず、操作にまごつくのではないかと当初は心配しました。しかし、運転手は基本的にメカ好きが多く、年配者を含めて意外とあっさりと浸透しました。
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