路線バス、コロナ以上に深刻「人手不足」の処方箋 「みちのり」CEOが語る、苦境を乗り越える戦略

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――デジタル技術を用いた生産性向上策には、どのようなものがありますか。

みちのりグループCEOの松本順氏(筆者撮影)

バスの走行ルートやダイヤをリアルタイムの需要に応じて、AI(人工知能)を駆使して最適化するダイナミック・ルーティングの技術も、この範疇に入ります。現状、バスのルートやダイヤは人間が考えているわけですが、入手可能なあらゆる情報をインプットしてAIに考えさせるほうが、より効果的な運用を実現できるはずです。

このダイナミック・ルーティングに関しては、郊外や過疎の町などで行うものと思われるかもしれませんが、大都市への導入の可能性もあります。大都市の場合は、一定方向への移動が集中する朝と夕方は固定ルート・固定ダイヤ、その他の時間帯はダイナミック・ルーティングにするといった組み合わせで行うのが合理的です。

――最近は、MaaS(マース=交通手段を事業主体の別なく情報通信技術などを使って1つのサービスとして結びつけ、シームレスな交通サービスを提供する概念)も各地で行われていますね。

MaaSを真に意味あるものにするためには、必要な公共交通情報のデータ(時刻表などの静的データと運行状況の動的データ)を交通各社がもっとオープンにしなければなりません。仮にどこかのベンチャー企業が、使い勝手のいいMaaSアプリを開発したとしても、データがオープン化されていなければ、データを利用するために交通事業者1社1社と個別に契約しなければならないということになりますが、これは現実的ではない。すべてのデータに自由にアクセスできる環境が整わなければ、個々の交通事業者間の垣根を超えたデータ連携による利便性の提供と、それによる公共交通の活性化というMaaSの真価が発揮されません。

オープンデータ化、なぜ進まない?

――我が国でオープンデータ化があまり進んでいない理由は、どのあたりにあると思いますか。

ここでいう公共交通情報のデータというのは、個人情報が特定されるような性質のものではないので、公開しても法的な問題はないはずなのですが、何かに悪用されるのではないかといったような警戒心があるのかもしれません。また、近接するエリアに自社の利用者を逃さないようにするために、MaaSの発展をそもそも望まない事業者もいるのかもしれません。

ちなみに、われわれが進めているオープンデータを通じた利便性強化の事例を紹介すると、当グループ各社のバスロケーションシステムの情報を(経路検索サービスの)ジョルダンとの連携により標準フォーマット化してオープンにすることで、グーグルマップ上でもバスのリアルタイム運行情報をご覧いただけるようになっています。その土地をたまにしか訪れない観光客に、当社グループの専用バスロケサイトを見ていただくのは無理がありますので、こういったさまざまな情報提供チャネルを用意するよう取り組んでいます。

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